キーワード: 農林業、生態系、物質循環、温室効果ガス、持続可能な発展
農業における技術革新のおかげで、旬の季節にしか 食べられなかった野菜や果物も、現在は気軽にスーパーで買えるようになってきました。これらの技術革新は私たちの食生活を豊かにしてくれていますが、その 多くは、何十億年という長い年月をかけて蓄積されてきた地球の資源を消費するものです。いわば、自然を収穫しすぎているともいえるヒトと地球の関係に危機 感をもち、私たちの次の世代、次の次の世代まで続く新しい農業の形を模索しているのが「筑波大学複合生態系アグロスフィア*1」リサーチユニットです。
ヒトは地球資源を消費して、エネルギー循環を加速させている
Harvest the sun、太陽を収穫する、という表現がありますが、私たちは農業を介して生態系と、エネルギーや物質の交換をしています(図1)。人類は、このエネルギーの循環を過去に蓄積された化石燃料などを使って加速させているのですが、現在はそれがあまりに行き過ぎてしまっていると感じていま す。言い換えると、経済性を優先した結果、自然とヒトの間にあった共存関係が片理的になっている。このまま放置しておくと成り立たなくなってしまうこのエ ネルギー物質循環の「環」を、現在手に入れた便利な生活を維持したまま、再構築するにはどうしたらよいか。これに必要となる技術開発はなにかなどについ て、農林技術センターを1つの大きな実験施設と見立て、取り組んでいます。
ひとつの敷地にさまざまな農林業が集結する全国でも珍しい施設、農林技術センター
筑波大学複合生態系アグロスフィアリサーチユニットのメンバーは全員、筑波大の農林技術センターに所属しています(図2)。筑波大の農林技術センターは全 国でも珍しい存在で、農林業に関係する要素のほとんどがひとつの敷地のなかに整備されています。私たちはこの特徴を最大限に生かし、持続可能な新しい農業 の形をつくばから発信していきたい、と考えています。現在は、その第1段階、物質とエネルギーの流れを相対的に理解・評価する系の構築に取り組んでいま す。
社会への貢献・実績
● 複合生態系生産システムにおける長期的な炭素循環環境評価モデルの確立
● 農林業における、CO2やエネルギー負荷の少ない栽培法の確立
● 農業生産における持続的開発に関する教育(Ag-ESD)シンポジ
ウムの開催(ユネスコと共催)とこれによるアジア・アフリカ諸
国のモデル地域への適用・評価することによって生産活動におけ
る炭素放出低下への貢献(図3)
● 構築した環境計測システムおよび炭素循環評価モデルの実習教育への活用