聴(Tsukuba Communications)

「ロボットスーツHAL®」とは? 世界最先端の、人を幸せにするテクノロジーです

世界初のサイボ I-グ型ロボット
 ロボットスーツH A L(Hybrid Assistive Limb)は、身体に装着することで、人の動作を支援・補助する世界初のサイボーグ型ロボットです。

 人が身体を動かそうとする時、その運動意思が脳神経系から筋肉に伝達されます。 その際にわずかな生体電位信号が発生し、 皮膚表面に漏れ出すのです。H A L は、 皮膚表面に貼りつけたセンサーでその電気信号を読み取り、それをもとにパワーユニットを制御して、筋肉の動きと一体になって人の動作を支援します。

ロボットスーツHALの仕組み
 装着者の方、一人一人の身体動作をより無理なく自然な形で支援出来るよう、 H A Lには2つの制御系が混在しています。 電気信号による装着者の動作意思を活用する「サイバニック随意制御システム」。
もう一つは事前に人間の身体動作がプログラムされたコンピュータで人の動きを再現する、ロボット的な「サイバニック自律制御システム」です。
 この2つの制御系を混在させることで、一人一人に合った、より自然な身体動作の実現を可能としたのです。

グッドデザイン金賞受賞

 全身一体型の「 H A L-5 」は、グッドデ ザイン金賞を受賞しました。ロボットスーツの開発は、機能面での便利さ、使い心地の良さを重視しておりましたので、デザインが評価されて金賞を受賞できたのは、まさに驚きと感動でした。
 ちなみに、この全身一体型HALの重量は、23キロくらいありますが、フレームが床に接地する構造により、装着者が重さを感じることはありません。

新レい学術領域「サイバニクス」
 寝る聞も惜しんで人支援研究に取組んできましたが、実用化に漕ぎつけるまでに、17年かかりました。挑戦の連続でしたね。 脳にとって、身体は、道具であるとともに、 センサでもあるので、ロボットス ーツを装着すると人聞は違和感を感じます。その違和感を取り除くにはどうするか・・小型化・経量化も問題でしたし、個人差も考慮しなければなりませんでした。
 これらの問題を解決するために、サイバネ ティクス、メカトロニクス、インフォマティクスを 中核として脳・神経科学や行動科学、I T技術、生理学、心理学、社会科学など、さまざまな学術領域を融合複合させた包括的な学術分野を開拓し、それを「サイバニクス」と命名しました。この新学術領域の確立に成功して、2 0 0 7 年には国際教育研究拠点「サイバニクス人・機械・情報系の融合複合」として、グローバル C O E プロ グラムに採択され、さらに 2 0 0 9 年には「健康長寿社会を支える最先端人支援投術研究」拠点として、内閣府最先端研究開発支援プログラム( F I R S T )に採択さ れました。2 0 1 1 年には筑波大学に「サイバニクス研究センター」が新設され、セン ター長に就任致しました。
 このように、人材育成と研究開発を同時展開させながら最先端の人支援技術の推進に取り組んでいます。

大学発ベンチャー企業
「 C Y B E R D Y N E 」蹟立
 H A L を学会発表して以来、国内外の様々な企業・研究所・大学から共同研究の申し込みがありました。しかし、未開拓領域での新分野開拓を強力に推進するために、政府による大学発ベンチャー構想とも連動させ、2 0 0 4 年、大学発ベンチャー企業C Y B E R D Y N E(株)を立ち上げました。同社を通じて、人に焦点を当てた研究開発・製造・提供を推進しています。 
 医学部の附属病院のように、工学の分野においても大学教授と大学院生と研究者が実問題を対象として基礎と実際を行えるような組織であり、産官学民が一体と なって未来を開拓する、そんな理想にむけて動いています。

世界の医療・福祉施設で 活躍中

 世界トップの実績と先進性を誇るH A L。運動機能が低下した患者さんや高齢者を対象とした福祉用、被災地での重作業を軽減するために開発された災害用など、すでに実用化されている技術です。さらに、福祉用 H A L は現在、日本全国 1 3 0 を超える病院や介護福祉施設などで、約300体が稼働しています。これによって実問題の情報が常に基礎研究にフィードバックできるという独特の環境が産声を上げ、国内外での連携が進んでいます。 福祉大国であるデンマークやスウェーデンからは国を挙げてH A L プロジェクトが
動き始め、既に拠点を立ち上げたドイツを筆頭に、欧州各国への展開が始まっています。

原発現場でも活躍
東京電力福島第一原発事故を受けて、災害用ロボットスーツを、欧州向けに開発している医療福祉モデルを元に緊急開発しました。作業員の被曝を半減できるタングステン製の放射線防護服は、重さが60キロあり、移動や長時間の作業が困難でした。新たに開発された H A L を装着することで、防護服の重さを感じずに、災害現場での作業を進めることができるのです。
 日本には軍事研究や宇宙開発のようなハイテクの研究開発を推進するフィー ルドがほとんどありません。私は、この医療福祉分野での最先端の研究開発成果が、原子力・レスキューなど様々な極限環境へ展開できると信じてきました。

無限に広がる可能性
 サイズ展開や超薄型化、単関節型などの開発にも注力しています。H A L の応用分野は幅広く、今後は、介護の現場や工場などでの重作業支援、エンターテインメント分野等さまざまな分野での活躍が期待されます。基礎研究から実現場での活用までのサイクルをスパイラルを描くように構築することで上方向のイノベーションスパイラルができ上がり、国際オープンイノベーションプラットフォームとして活躍できる日が来ることを楽しみにしています。

山海嘉之教授(システム情報系)