雨乞いなどの風習が昔から世界中であるように、天気を自由に操ることは、人間の一つの夢だ。現在は「人工降雨」という技術を使って、雨をある程度、人間の意志で降らせることができる。真
木太一元客員教授(九州大学名誉教授)もその研究者の一人だ。
そもそも雨はどのようにして降るのだろうか。まず、雲の中の温度が十分に低い時、氷晶という小さな氷の粒が発生する。氷晶は周りの水蒸気を吸収しながら成長する。水蒸気を吸収して重
くなった氷晶は溶け始めて落下し、地上に降る。これが雨の降る仕組みだ。
真木元客員教授は、液体の二酸化炭素である液体炭酸を使って、氷晶を発生させる方法を研究している。まず、約マイナス90度の液体炭酸を、飛行機で雲の内部の下の方にまく。するとすぐに気体になり、周りの空気を冷やす。これにより雲の内部の水蒸気が凍って氷晶が発生する。発生した氷晶は雲の内部の上乗気流に乗りながら、周りの水蒸気を吸収し、成長。こうして雨が自然に降るしくみを人工的に作ることができる。
同元客員教授は3月14日に東京都の三宅島と御蔵島で、液体炭酸を使った人工降雨の実験を行った。その結果、約2時間で100万㌧以上の雨が降った。実験は2回連続で成功しており、有効性が実証された。ヨウ化銀など他の物質を使った人工降雨の技術もあるが、液体炭酸を使うと、低コストで多くの雨を降らせることができるという利点がある。
雲の内部の水蒸気を氷晶にして雨を降らせるため、雲がなければ人工的に雨を降らせることはできないが、人工降雨の技術は砂漠の緑化や農業などの分野に応用ができる。一方、人工的に雨を降らせると、自然に降るはずの雨が降らなくなる可能性があるため、他の地域の砂漠化を引き起こす恐れがあるという意見もある。真木元客員教授は「液体炭酸をまく方法が有効であることは明らかだが、まだ実験データが足りない。十分に実験を行って効率を高めて行きたい」と語る。
人工降雨の技術には費用や効率などの問題があり、商用化されてはいない。しかしながらこれか2時間で100万㌧の降雨人工降雨ら研究が進めば、天気を自由に操るという人間の夢に、一歩近づけるかもしれない。(パク・ジョンヒョク=物理学類3年)
ハロー先端科学(大学新聞)
2時間で100万トンの降雨 「天気を操る」夢に近づく
© University of Tsukuba