ハロー先端科学(大学新聞)

軽い運動で記憶力向上 脳内の「歯状回」が活発化

体育系 征矢 英昭 教授

 「試験前に単語や公式などをなかなか覚えられない」、「歳を重ねるごとに記憶力が低下する」……。そんな悩みが軽い運動によって解決するかもしれない。征矢英昭教授(体育系)らのグループは、ジョギングやヨガのような超低強度軽運動(*注)を短時間行った直後に、記憶力が向上することを世界で初めて発見した。

 生物は、見る、味わうなどの刺激を脳の中心部の海馬で最初に記憶するため、海馬の活動が活発なほど記憶力は向上する。特に、海馬の中でも物事を分類して記憶する部位「歯状回」は、過去に似たような経験があっても、新しい経験を別な「事柄」として記憶でき、記憶成立には不可欠だ。またここは、海馬の中で唯一、新しい神経細胞が作られる部位としても知られている。  

 これまでの動物実験から、運動が歯状回の活動を活発にして神経細胞を増やし、記憶力を向上させることは分かっていたが、人間の場合、どの程度の運動で効果があるかは不明だった。このため、征矢教授は歯状回を測定できる特別なMRIを使い健康な大学生の男女36人を調査。運動後と安静後の歯状回の働きと記憶力を測定した。
 その際、①エアロバイクで1分60回転程度の軽い運動を10分間行い、5分後に測定②運動せずに15分間の安静後、測定……の2実験を実施。この際MRI内で、野菜などの写真を連続的に25 分間見させ続け、各写真を「初めて見た」、「前にも似たものがあった」、「全く同じものがあった」に分類させ、記憶力を測った。 その結果、運動後の方が正解率が数%上がったほか、MRIでの測定で歯状回の活動も活発になることが判明。征矢教授によると、この効果の正確な持続時間は分かってないが、研究結果から少なくとも運動後20〜30分程度は効果があるという。
また、実験と同程度の軽い運動でも効果があり、ヨガや太極拳がおすすめだという。

 征矢教授は現在、記憶力の低下した高齢者や認知症患者に対して運動で同様の効果が得られるか研究している。

  注:超低強度軽運動=感覚的にはかなり楽だと感じる程度の1分当たりの心拍数が、若齢者で100、高齢者で90程度になる運動。