研究コンプライアンス・安全管理

遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分Access and Benefit sharing (ABS)

まずは、こちらをご覧ください。

名古屋議定書締結!…研究者にも何か関係があるの?(ABS学術対策チーム)

 生物の多様性に関する条約は、遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS:Access and Benefit sharing)を目的の一つとし、条約締約国に対して、遺伝資源の取得の機会について「情報に基づく事前の同意(PIC)」及び遺伝資源の提供者と取得者との間で「相互に合意する条件(MAT)」を設定すること等を求めており、これらは、条約が平成5年12月に発効(我が国は平成5年5月に締結)して以来、我が国を含む条約締結国において適用されているところです。このABSの実効性を高めるために決められた国際的なルールが「名古屋議定書」です。

 海外から遺伝資源を取得する場合は、提供国政府からPICを取得し、提供者との間でMATを取り決める必要があります。

 

海外の遺伝資源を取り扱う予定がある、またはすでに取り扱っている方で、名古屋議定書や我が国の国内指針への対応等でご相談をご希望の場合は、こちらにご相談ください。

 ABS相談窓口:研究推進部研究企画課推進企画係 ℡ 2926 

        E-mail abs-idenshigen[at]un.tsukuba.ac.jp

                        ※ [at] を半角@に変更してメールをお送りください。

 

〇遺伝資源とは?

 遺伝の機能的な単位※1を有する植物、動物、微生物その他※2に由来する素材であって現実の又は潜在的な価値を有するもの及びその派生物(生物資源又は遺伝資源の遺伝的な発現又は代謝の結果として生じる生化学的化合物(遺伝の機能的な単位を有していないものを含む。)であって、天然に存在するもの(例えば蛇の毒、薬草の薬効成分など))。

 ※1 遺伝形質を規定する因子であって、形質に係る遺伝情報を、世代を通じて受け継ぐ機能

   を有するものを意味し、具体的には遺伝子(生物の個々の遺伝形質を発現させる元になる

   デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)の分子の特定の領域)を指す。

 ※2 ウイルス及びウイロイドを含めた全ての生物を含むものである。

○遺伝資源の利用とは?

 遺伝資源の遺伝的又は生化学的な構成に関する研究及び開発を行うこと(製品開発等に至らない遺伝資源の遺伝的又は生化学的構成に関する研究も含む)。

○遺伝資源に関連する伝統的な知識とは?

 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関連する伝統的な生活様式を有する先住民の社会及び地域社会において伝統、風習、文化等に根ざして昔から用いられている特有の知識のうち、遺伝資源の利用に関連するもの。

 「先住民の社会及び地域社会」とは、ある国において、他の国民と種族、宗教又は言語を異にする人々であって、歴史的、社会的又は文化的観点から他の集団と明確に区別でき、かつその国の領域内にもとから住んでいるものが属する社会及びそれに類する社会をいい、我が国においてはアイヌ社会が該当する。

 

〇遺伝資源の取扱いについて

 研究究機関等における遺伝資源の取扱いについて(H29.5.18 文部科学省通知)

 ⇒ 大学等における遺伝資源の取扱いが適切に行われるよう、大学等は次の事項に対応するこ

  と。

1 担当部署・担当者の明確化

  大学等に所属する研究者が相談できる環境整備として、海外の遺伝資源の取扱いに関する担

 当部署・担当者を明確にすること。

2 現状把握

  大学等における体制構築に当たっては、機関内における海外の遺伝資源の利用状況を把握す

 ること。

3 機関内プロセス及びルール作り

  海外の遺伝資源を適法に取得及び利用する手続きを行うために、機関内における遺伝資源の

 取得及び利用のプロセス及びルールを整備すること。

4 機関内周知

  遺伝資源の取得及び利用に関わる研究者及び事務職員に対し、条約及び指針の遵守を目的と

 して啓発活動等を実施すること。

このことについて、本学においては、当面、次のとおり対応する。

1 窓口を研究推進部研究企画課に置く。

  つくば機能植物イノベーション研究センター(T-PIRC)の「遺伝資源・国際共同研究部門」

 が、国立遺伝学研究所ABS学術対策チームとともに、文部科学省ナショナルバイオリソース

 プロジェクト補助事業として、国内の研究機関等の遺伝資源取得の支援を行うことから、学内

 の支援も行うこととし、協力体制をとる。

  遺伝資源の取扱い体制図

2 海外遺伝資源を利用した研究に関するアンケートを実施する。

  日本国外の遺伝資源を利用した研究に関するアンケート

3 要検討

4 国立遺伝学研究所ABS学術対策チームに出張セミナーを依頼する。

 

【背景】

1993年12月 生物の多様性に関する条約が発効

生物の多様性に関する条約の目的

 (1) 生物多様性の保全

 (2) 生物多様性の構成要素の持続可能な利用

 (3) 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分Access and Benefit Sharing=ABS

  ABSに対応する手続きは下記のとおり。

  ① 遺伝資源の取得は提供国の法令に従う。

  ② 提供者と利益配分などの規定を含む相互合意(MAT)を結ぶ。

  ③ 提供国政府に対して十分な情報提供及び説明を行いながら事前届出を行い、許可を受け

   る(PIC)。

  ④ 遺伝資源を利用国に移転する場合は、別途、素材移転契約(MTA)を結ぶ。

  ⑤ 生じた利益は、MATに基づき配分を行う。

  ※ PIC (Prior Informed Consent)は提供国政府機関、場合によっては提供者個人あるい

   は地域社会からの事前同意を示す

    MAT (Mutually Agreed Terms)は提供者と利用者間の合意条項を示す

2010年10月 生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の

        公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書が採択

名古屋議定書

 生物の多様性に関する条約で定められた、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分のための国際ルールの適正な実施を確保する措置を規定。

 提供国:アクセス手続きの明確化

 利用国:自国の利用者による提供国法令等の遵守の促進

2014年10月 名古屋議定書が発効

2017年 5 月 名古屋議定書の締結が国会において承認、締結

2017年 8 月 締約国になる。

        国内指針(遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配

        分に関する指針)が施行。