リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

悪性腫瘍の治癒を目指す 〜創薬開発に向けて
前臨床がん研究リサーチユニット

坂田(柳本) 麻美子 宮崎 淳 菊池 慎二 李 冬平

キーワード: 前がん病変、早期がん病変、つくばトランスレーショナルリサーチコア、がん発生

http://www.md.tsukuba.ac.jp/diagpatho/

 

50noguchi01 日本人の実に2人に1人が生涯の間にがんに罹るといわれるほど、がんは私たちにとって身近な病気です。野口先生が代表者を務めるリサーチユニットでは、臓器によって異なるがんの初期状態や進行の分子メカニズムについて、さまざまな専門をもつグループが連携して研究をしています。目指すのは、がんの早期発見早期治療です。

 

がんの早期発見早期治療に貢献したい!

 私たちの体は細胞の集まりでできています。細胞は必要なときに必要なだけ分裂して新しく供給されますが、この仕組みを制御する遺伝子に異常が生じると不必要に増殖を続ける細胞の塊(がん細胞)ができてしまいます。近年ではがん細胞の遺伝子の異常に着目した分子標的治療薬の研究が盛んに進められています。しかし、がんを引き起こす遺伝子の異常は一つではありません。がんの進行とともに、遺伝子の異常は蓄積されて複雑に関与するようになるため、現在の分子標的治療ではがんを完全に治すことは困難です。
 では、遺伝子の異常が複雑になる前のがんに分子標的治療薬が使えたらどうでしょう? 手術をせずに薬を飲むだけでがんを“治す”ことが可能になるかもしれません。このリサーチユニットでは、さまざまな臓器で発がん初期の遺伝子異常を研究することで、ヒトにおける発がんの分子機構の本質を明らかにし、がんの早期発見早期治療に貢献することを目指しています。
 一般に「がん」と言った場合は、病院で医師によってがんと診断されるような臨床がんをさしますが、本リサーチユニットではそれよりも前の進行段階にあたる「前臨床がん」を研究の対象にしています(図1)。前臨床がんを集め、どのような遺伝子に異常が見つかるかを系統的に解析しているのは、全国でも筑波大学だけです。

図1:がん進行の各段階

図1:がん進行の各段階

 

 

 

前臨床がん研究の最前線

図2:肺の前臨床がんの一例

図2:肺の前臨床がんの一例

 肺がんは手術によって肺の一部を切除することで治すことができます。しかし、肺の一部を失うことによる呼吸量の低下など、手術による体への負担は少なくありません。もし前臨床がんの時点で薬によって治すことができれば、手術の必要はなくなります。
 幸い、肺の前臨床がんはCT 検診で比較的容易に発見できる前臨床がんの一つです(図2)。この肺前臨床がんを使って、私たちはストラテフィンという遺伝子の研究を進めています。私たちのこれまでの研究で、肺の前臨床がんではストラテフィン遺伝子が細胞の増殖に影響を与えていることが明らかになりました。現在は、ストラテフィン遺伝子が作るタンパク質を標的とした分子標的治療薬の研究を開始しています。

 

 

 

 

 

 

社会への貢献・実績

● 第4 回 つくばキャンサーアリーナ開催 (2013 年7 月25 日)
● 第5 回 つくばキャンサーアリーナ開催 (2014 年2 月21 日)
● WHO における肺がんの分類変更に貢献
  ( 細胞診で得られた細胞が分類可能になり、診断に貢献)