リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

社会を支える基盤技術の ブレイクスルーを目指す
パターン認識・機械学習リサーチユニット

代表者:福井 和広    
他のメンバー:亀山 啓輔  滝沢 穂高  佐久間 淳  鈴木 健嗣  延原 肇  

日野 英逸 佐藤 雄隆 小林 匠

キーワード: パターン認識、画像認識、機械学習、統計科学、ビッグデータ

http://www.cvlab.cs.tsukuba.ac.jp/~prml/

 

35fukui01 人を支える様々な知的システムの高性能化や、ビッグデータの出現に伴い、近年、社会の様々な場面で、膨大なデータを用いて柔軟で複雑な判断をするコンピュータが求められています。パターン認識は、コンピュータが入力された情報の特徴をデータベースと照合する際に使われる技術です。また、こうした照合の積み重ねによって独自にデータベースを更新していくことを機械学習といいます。これらの技術によって、人間が経験を活かして物事を判断するように、コンピュータも判断や学習ができるようになります。しかしデータ量が多くなると、コンピュータの計算処理時間が増え、実用レベルではなくなってしまいます。この問題を解決するため、本リサーチユニットでは統計学など数学を駆使して、パターン認識と機械学習の精度向上に向けた理論と基盤技術の研究開発を進めています。

 

指文字学習支援システム

図1:指文字認識システム。複数台のカメラで撮影した    画像を、様々な指文字と照合する。

図1:指文字認識システム。複数台のカメラで撮影した画像を、様々な指文字と照合する。

 リサーチユニットの研究成果の一例として、指文字学習支援システムを紹介しましょう。指文字は、手の形で50 音の各文字を表現する視覚言語の一つです。人差し指と中指を揃えて伸ばす、離して伸ばす、などの良く似た形が違う音を表すこともあります。指文字の学習者にとっては、自身の指文字が相手に通じる正しい「形」になっているかどうかを判断してフィードバックしてくれる機械が存在すれば、効果的に学習を進めることができます。しかし、見る角度によっては同じに見えてしまうような形もあり、二次元的な形の比較だけでは精度面で実用に耐えるものにはなりません。
 本リサーチユニットでは、複数台のカメラを用いて学習者の指文字を撮影し、データベースにもさまざまな角度から撮影した複数画像を用いることで、精度の高い指文字学習システムを開発しました(図1)。データ量の増加に対応するために、相互部分空間法*1 という識別法を用いて識別処理の効率化を実現しています。

 

 

 

 

 

 

 

医学・セキュリティ・さまざまなフィールドへ

図2:リサーチユニットの研究分野

図2:リサーチユニットの研究分野

 他にも、本リサーチユニットではさまざまな視点からパターン認識技術の実用研究を進めています。例えば、検体の中から特定の細胞を検出する技術や、CT 画像から臓器の病変を認識し医師の判断をサポートする技術など、医学分野への応用研究も行っています。 また、パターン認識技術の応用先は画像処理だけではありません。情報を暗号化したままで内容を照合する秘密検索手法の開発にも取り組んでいます。
 こうした異なる課題に取り組む研究者同士が相互に情報交流することで、新しいパターン認識の理論体系の創出を目指して研究を推進しています(図2)。

*1:相互部分空間法では、一枚の画像を高次元ベクトル空間の一つのベクトルと見なし、比較する2つの画像セットをそれぞれベクトル空間における部分空間でコンパクトに表します。これにより2つの画像セットの類似度を部分空間の距離として効率良く求めて、安定な識別を実現しています。

 

社会への貢献・実績

● プライバシ保護技術の医療応用に関する研究を実施
● 画像センサを用いた視覚障がい者支援システムの研究開発を実施
● 腹部X 線CT 画像からの対話的な臓器抽出手法の研究開発を実施
● タンパク質の構造解析のためのマルチモーダル構造類似度の研究開発を実施