リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

CO2 問題の解決、水素社会の構築 を新しい触媒から
ナノグリーンリサーチユニット

キーワード:  環境・エネルギー、CO2 削減、元素戦略、触媒、炭素利用

http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~nakamura_lab/  http://www.tsukuba-greeninovn.org/

 

23nakamura01 人の活動に伴って排出される二酸化炭素(CO2)は世界的に増加の一途をたどっています。また、CO2 を排出しない水素社会の構築がここ数年強く叫ばれています。本リサーチユニットは、未来に負担を負わせずに高度な科学技術を実現する社会を支えるために、触媒機能を利用してエネルギーをいかに産み出すかを念頭において活動しています。白金(Pt)などの貴重資源の使用を抑え、試行錯誤ではなく科学的な設計指針に基づいて安価で安全な元素からなる触媒を研究開発していこうとしています。

 

水素社会を支える高効率触媒の研究開発

図1:水素社会に貢献する触媒研究の概念

図1:水素社会に貢献する触媒研究の概念

 CO2 の排出を抑制するには、高生成効率・低生成エネルギーの観点から、CO2 を水素と反応させてメタノールにするのが最も現実的で合理的な考えです。一方、水素(H2)燃料電池を使うことによりCO2 を排出することなく水(H2O)を排出することで、地球規模で負担の少ない社会を実現することができます(図1 参照)。現在過剰に存在するCO2 を削減し、新しい燃料電池システムを実現するためには、いずれも水素を必要としています。CO2 からメタノール合成するためには、CO2 を触媒表面で活性化させる必要があります。そのために、水素原子を表面に吸着させた銅(Cu)表面にCO2 超高速分子線
を衝突させることで、対称性の高いCO2 を活性化して最終的にメタノールに変換する研究を進めています。触媒開発はこれまで試行錯誤的な研究開発に陥ってしまうのが通例でしたが、本リサーチユニットでは、計算科学と表面科学の知識を融合させて物理化学の基礎を確立した上で、工学的な技術を社会に提供しようという研究に重きをおいています。

 

 

 

 

 

 

 

 

燃料電池への水素利用と藻類を利用した水素製造

図2: N 含有グラフェンのSTM 像とSTS スペクトル(STM: 走査トン ネル顕微鏡、STS:走査トンネル分光法)

図2: N 含有グラフェンのSTM 像とSTS スペクトル(STM: 走査トン
ネル顕微鏡、STS:走査トンネル分光法)

 自動車、家庭でのエネルギー源として燃料電池が広く使われだしています。現在はカソード電極触媒としてPt が使われていますが、低価格化、希少資源の有効活用の観点から、π電子系炭素利用の研究を進めています。窒素を含有させたグラフェン(C 原子1 層からなる物質)やナノカーボンのエッジ効果を利用しようとするものです。本来なら非常に均一な電子状態をもつグラフェンが、図2 のようにN 原子などが作る欠陥周囲で原子毎に異なる電子状態をもつことを見出しました。まだ化学的性質が明らかにされていないカーボンナノ構造を基礎的に理解したうえで新しい触媒を開発しようとしています。また、メタノール合成、燃料電池で利用する水素は、筑波大学で先進的な研究をしている藻類から作ることを考えています。
 従来の科学技術は、基礎科学(シーズ)、応用研究、実用化研究、実用というフローで進められてきましたが、変化が速く、競争の激しい現代社会の中では、社会に受容されることを必要な要素として基礎研究を進めることが要求されています。本リサーチユニットでは、産業界・社会での実用に必要な課題を取り入れつつ、できるだけ早く実用化に移行できる基礎研究を産業界とも連携して進めています。

 

 

 

社会への貢献・実績

● CO2 還元ワークショップの開催 2015 年3 月13 日
● アルカリドープグラファイトにおける無磁場下のランダウ準位
 (Nature Communications, Vol. 3, 2012.)
● ヘテロダインSTS の開発 (Scientific Reports, 4, 6711, 2014.)
● 県民大学「ナノグリーンイノベーション」2015 年5 月~ 8 月 茨城県県南生涯学習センター