リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

観測から解析へ〜北極圏温暖化研 究の次のステージを拓く
北極圏温暖化影響解析リサーチユニット

代表者:白岩 善博    中核研究者:田中 博  内海 真生  
他のメンバー:福島 武彦  松岡 憲知  池田 敦  若月 泰孝  濱 健夫  石田 健一郎  中山 剛  鈴木 石根  新家 弘也  

塙 優 Jamie Toney 沢田 健 中村 英人 桑田 晃 天野(佐藤) 千恵 Kay Bidle Peter Wilson

キーワード: 北極圏、温暖化、海氷激減、生態系、北極振動

http://plmet.biol.tsukuba.ac.jp/

 

 

05shiraiwa01 地球温暖化によって北極の氷が溶け始めている、という話を聞いたことはありますか? 実際に、北極圏の海氷の激減によって、それまで氷で隔てられていた大西洋と太平洋の植物プランクトン種が混ざり合う現象が確認されています。また、海洋の一次生産者である植物プランクトンの種数や個体数が大きく変化し、食物連鎖系をとおして漁業資源の生産変動など人間活動にも影響が出ています。これまで、こうした多くの観測データの蓄積は膨大になっているものの、温暖化の原因や影響の解明は、まだまだ難しい問題です。
 本リサーチユニットでは、フィールド調査、実験室での解析、コンピューターシミュレーション等様々なアプローチを用い、北極圏における気候変動と海洋生態系変動の原因と影響を正しく把握することを目指して研究を行っています。

 

多角的なアプローチで北極圏の温暖化を科学する

図1:筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータT2K による全球雲解析(渦を巻いている部分が北極低気圧)

図1:筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータT2K による全球雲解析(渦を巻いている部分が北極低気圧)

 本ユニットには、3つの研究領域があります。環境変動解析領域は、北極圏の気候や海域・陸域の環境変動を解析しています。例えば、北極海の海氷が激減している理由として、海氷を砕いてしまう北極低気圧の存在が考えられていますが、その実態はよくわかっていません。そこで、スーパーコンピュータに様々な数値条件を与えて地球全体の雲や気圧の動きをシミュレーションし、実際の北極低気圧を再現することで、その構造や成因を解析しています(図1)。また、海底の堆積物の分析から過去の海洋環境を復元する共同研究を進めています。
 海洋生態系変動解析領域では、海洋科学調査船によって採集された海洋植物・動物プランクトン群集の動態を解析し、温暖化がどう生態系に影響しているかを調査しています。
 海洋生物環境変動影響解析領域では、白亜紀に生産された石灰岩や石油の起源となったハプト藻類円石藻(図2)を対象に、世界で唯一筑波大学が海洋研究開発機構と共同で単離に成功した北極海株の生理特性を解析しています。

図2:円石藻類の一種。 ( スケールバーは 1000 分の 1mm)

図2:円石藻類の一種。
( スケールバーは 1000 分の 1mm)

 

 

円石藻と温暖化研究の深い関係

 円石藻は、海洋に生息する単細胞藻類で、光合成と石灰化により大気・海洋中の二酸化炭素を固定し、海底へ輸送するポンプの役割を担っています。バイオマス*1が大きく、地球規模の炭素循環に大きな影響を及ぼす重要な生物です。この円石藻が今、北極の冷たい海で増加しています。円石藻の低温適応メカニズムや増殖特性などを解明できれば、変動する北極海における植物プランクトンの動態や生態系への影響、物質生産性を予測するために必要なパラメーターを提供することが可能になります。
 こうした多角的な研究の積み重ねが、北極圏における温暖化影響解析、海洋生態系変動の未来予測には不可欠なのです。

*1:ある空間に存在する生物の量を、物質の量(質量など)で表現したもの

 

 

社会への貢献・実績

● 第2回国際アルケノン研究に関するジョイントミーティングを主催
● 北極圏温暖化影響解析に関するシンポジウム「 地球温暖化の停滞と加速(」気象学会)開催