ハロー先端科学(大学新聞)

植物の防御反応利用減農薬栽培への応用も(2016.05)

植物は、どちらかというと「静」的または「受動的」なイメージで捉えられることが多い。しかし、植物にも私たち人間と同様に多くの「ストレス」が存在し、さまざまなストレスに対応している。そして、それぞれのストレスに生理反応を引き起こすことで、常に変化し続ける環境に適応している。植物にとって重大なストレスの一つが「害虫に食べられること」である。食害を受けると植物側でさまざまな反応が起こる。その状況を研究し、将来的に減農薬栽培に役立てようとしているのが木下奈都子助教(生環系)だ。
 同助教によると植物は害虫に葉や茎を食べられるとストレスを「感じ」て、害虫が嫌う物質を作り出し、害虫に抵抗する。またこれまでの研究で、虫食いの被害を受けていない周囲の植物も、被害を受けた植物が出す気体状の物質を感知して、害虫に抵抗することが知られている。
 この反応は被害を受けた植物が出す気体状の物質が、何らかの方法で周囲の植物に影響を与え、害虫襲来の情報を伝える働きをするためだとされてきた。だがこうした気体状の物質は目に見えないため、詳しいメカニズムは解明されていなかった。
 そこで同助教は、植物が虫に食べられた際に出す「ジャスモン酸」というホルモンに反応して、蛍光を発するアブラナ科の植物に着目。ジャスモン酸のほとんどは液体として存在するが、一部は気体として存在し、「ジャスモン酸メチル」と呼ばれる。ジャスモン酸自体
は見えないが、このホルモンの働きが活性化され
ると蛍光を発する植物を用いて蛍光の動きを観察することで、ジャスモン酸メチルの働きを視覚的に捉えることを考えた。これを行えば、ジャスモン酸メチルが、被害を受けた植物から空気中に拡散し、周囲の植物の体内に吸収され反応する状況を解明できる。
 例えば温室で野菜を栽培する際、このアブラナ科の植物を温室内に等間隔で植えたとしよう。このアブラナ科植物の蛍光状況を監視し続ければ、温室のどこで野菜が害虫の被害にあい、ジャスモン酸メチルを出したかが判明する。別な言い方をすれば、これで温室内のどこに害虫がいるかも一目瞭然で分かる。
 同助教によると、このシステムを開発できれば、害虫の食害が起きている部分を少ない労力で早期発見することができる。
 農薬の害が叫ばれてから久しい。同助教の研究が進み、減農薬栽培の野菜が廉価で市場に流通する日も近いかもしれない。(小宮山瑛生=社会学類2年)