リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

内耳性難聴の治療を目指して
聴覚障害発症機序の解明に関する検討リサーチユニット

代表者:原 晃    
他のメンバー:高橋 智  田渕 経司  西村 文吾  田中 秀峰  中山 雅雄  
キーワード: 感覚系、聴覚、蝸牛、有毛細胞

http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/otorhinolaryngology/

 

 

53hara01 聴覚障害により音が聞こえにくくなる難聴は、音声言語によるコミュニケーションの大きな障害となります。難聴には音の伝えが悪いために生じる伝音難聴と、聞こえの神経に障害があるために生じる感音難聴があります。リサーチユニット「聴覚障害発症機序の解明に関する検討」は、感音難聴の発症メカニズムを探り、難聴治療に結びつけることを目指すリサーチユニットです。

 

音の振動を電気信号に変換する耳の奥の小さな器官、蝸牛

 感音難聴の多くは内耳性難聴で、突発性難聴やメニエル病など症例数も多い疾患ですが、その治療法が確立していないのが現状です。内耳には蝸牛という器官があり、内耳性難聴の多くにおいてこの器官の障害が関係しています。蝸牛は骨に囲まれた場所に位置する小さな器官なため、非常に扱いが難しく基礎研究が遅れていました。しかし近年、蝸牛には外有毛細胞と内有毛細胞と呼ばれる受容器があり、これらの細胞により音の振動が電気信号に変換されていることなどが分かってきました(図1)。

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図1:蝸牛の全体像と各部分の拡大図    コルチ器にある有毛細胞により音の振動が電気信号に変換される

 

 

 

 

 

 

 

内耳障害の原因・病態・障害過程 ひとつひとつのパーツをつなぐ

 内耳性難聴発症メカニズム解明のためにモルモット、ラット等の実験動物を用いた病態モデルによる研究を行っています。一例として、突発性難聴については血流障害説と考え、血流を一時的に遮断することで病態モデルを作成し、蝸牛で起こる障害について調べています。血流遮断(虚血)による酸素欠乏で細胞に障害が起こるだけではなく、再灌流によって細胞が障害されること、特に外有毛細胞でその影響が大きいことが分かってきています(図2)。このような虚血・再灌流による障害の特徴に注目し、細胞組織障害が起こる詳細な過程を調べるとともに、治療への試みとして薬物学的なアプローチも行っています。
 また、突発性難聴の他、急性音響外傷、メニエル病、薬物性難聴などの内耳性難聴についても同様に治療に向けた基礎的研究を行っています。

図2:血流遮断と再灌流による有毛細胞の聴毛障害の様子 ( A:虚血非負荷、B:虚血負荷後) 「内耳性難聴の治療に向けてー病態モデルを用いたアプローチー(原晃 著)」 より転載

図2:血流遮断と再灌流による有毛細胞の聴毛障害の様子
( A:虚血非負荷、B:虚血負荷後)
「内耳性難聴の治療に向けてー病態モデルを用いたアプローチー(原晃 著)」より転載

 

社会への貢献・実績

● 内耳性難聴発症メカニズムの解明と内耳性障害研究の発展
● 内耳性障害の病態に即した新たな治療法開発