リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

逆問題の手法で「非破壊検査」
逆問題研究リサーチユニット

代表者:磯崎 洋    
他のメンバー:青嶋 誠  竹内 潔  宮本 雅彦  中井 直正  矢田 和善  

千原 浩之 秋山 茂樹 森田 純 加藤 久男 坪井 明人 笹本 明 田崎 博之 竹山 美宏 梁 松 照井 章 石井 敦

キーワード: 逆散乱理論、ウエーブレット解、高次元デ―タ解析、トモグラフィー、幾何解析

http://fc.jpn.org/inverse-problem/

 

40isozaki01 数学・物理学で古くから知られる逆問題の計算手法は、数学者と他分野の研究者との異分野融合研究の中で様々な応用が試みられ始めました。この手法で様々な対象の内部構造の探査にチャレンジしてゆきます。

 

順問題と逆問題

図1:体の断面に見立てた数理モデル。内臓    ( 紺)と腫瘍(赤)を含む。    右:逆問題の手法で推測

図1:体の断面に見立てた数理モデル。内臓 ( 紺)と腫瘍(赤)を含む。 右:逆問題の手法で推測

 数学や物理学には順問題と逆問題というものがあります。ある音源から音を発すとき、幾つかの物体に反射されて戻って来る音の大きさを計算するのが順問題であり、配置の情報から反射音の情報が導かれます。その逆に反射音の情報から物体の配置情報を推定するのが逆問題であり、この手法は魚群の探知や内臓の検査に現在広く用いられています。一般に、逆問題では「音」のような単純な(低い次元の)情報から内臓画像のような複雑な(高い次元の)情報を推定することが要求されるところに原理的な難しさがあります。数学はその困難を、1) 複数の仕方で観測された単純情報を組み合わせて情報を増やす、2) 低次元情報と高次元情報の密接な結びつきが理論的にわかっている特別なケース(解析性など)を当てはめる、といった手法で乗り越えます。後者の代表例は「境界値逆問題」です。図1左のような人体のモデルを考えるとき内臓や腫瘍で電流の流れ方が異なりますが、体の表面の電流の様子を調べるだけで体内の電流を推測し、結果的に内臓や腫瘍の位置を推定できます(図1右)。フィンランドの研究仲間とともに、これを本物の人体に応用する計画が進んでいます(図2)。

 

図2:ヘルシンキ大学Samuli Siltanen 教授が自ら体表の電流測定テスト

図2:ヘルシンキ大学Samuli Siltanen 教授が自ら体表の電流測定テスト

応用範囲は多様

 他のさまざまな物質の内部構造の推定にも逆問題の手法は使われ始めています。例えば炭素の同位体が6角格子と呼ばれる構造で構成されている“グラフェン”の内部構造の推定(図3)。また、老朽化した鉄橋の金属内部の欠陥を見つけるための応用も考えられています。欠陥のある場所では局所的に温度が変化することを利用する技術です。このように逆問題の手法は数学と他分野の融合研究の好例となっています。

図3:グラフェンの構造、以下より抜粋 “PROPOSAL for the 'Strategic Innovation Agenda' (SIA) for the EIT written by Prof. Lászlo P. Biró Nanostructures Dept. Research Institute for Technical Physics and Materials Science, Budapest, Hungary”

図3:グラフェンの構造、以下より抜粋
“PROPOSAL for the ‘Strategic Innovation Agenda’ (SIA) for the EIT written by Prof. Lászlo P. Biró Nanostructures Dept. Research Institute for Technical Physics and Materials Science, Budapest, Hungary”

社会への貢献・実績

● アメリカの学術専門雑誌“Inverse Problems and Imaging”編集委員