リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

つくばの頭脳で ソフトマターに挑む
ソフトマター科学リサーチユニット

代表者:齋藤 一弥    中核研究者:山村 泰久  菱田 真史  
他のメンバー:長友 重紀  庄司 光男  

瀬戸秀紀 米谷慎 福田順一

キーワード: ソフトマター、複雑液体、液晶、バイオマテリアル

http://www.chem.tsukuba.ac.jp/sms/

 

32saitou01 ソフトマターとは、液晶・高分子など柔らかい物質の総称で、物理学・化学・生物学の境界領域に位置し、多角的な視点から研究が発展します。そこで、液晶、複雑液体、バイオマテリアルを3本の柱に、理論と実験を有機的に結合した主担当グループを組織し、研究を強力に推進するリサーチユニット「ソフトマター科学」を結成しました。

 

ソフトマターの可能性は無限大

図1:ソフトマターで広く見られる双連結構造 の単位格子。赤と青のギャングルジムが 周期的極小曲面で仕切られた二つの空間 に存在する。液晶では1000 個ほどの分 子が集まってこのような構造を作る。

図1:ソフトマターで広く見られる双連結構造の単位格子。赤と青のギャングルジムが周期的極小曲面で仕切られた二つの空間に存在する。液晶では1000 個ほどの分子が集まってこのような構造を作る。

  “物のありよう”の研究(物性物理学)ははじめ、金属、半導体、セラミックなどの硬いもの(ハードマター)対象に急速に発展しました。ハードマターは大多数の原子が規則正しく配列している結晶構造を持ち、測定することも理論的研究も比較的容易で、様々なモノに実用されてきました。一方、ソフトマターは、生物の体、食べ物、数々の石油化学製品など、私たちの身の回りにあふれているものです。意外なことですが、ガラスのように“硬い”物質の中にもソフトマターに分類されるものがあります。ガラスの中は実は原子がバラバラに配列していて、「粘り気が極度に高い液体」の状態なのです。結晶のようにがっちり原子配意が固定されておらず様々に変化できる「液晶」もソフトマターの代表格です。
 「ソフトマター」という言葉は、ピエール=ジル・ド・ジェンヌがこの分野の研究でノーベル物理学賞を受賞した1991年頃から使われ始め、近年では生体膜や化粧品などへの応用研究が注目されています。ソフトマターは分子の集まり具合で形や性質が決まり、また、光や温度で変形するなど多様な性質を持ちます。混沌の中の可能性を探るのがソフトマター研究の醍醐味です。
図2:細胞膜類似の構造をもつベシクル(閉じた小胞)上の脂質二重膜内で起きた相分離    (蛍光色素でオレンジとグリーンに着色)。機能発現にはこうした膜の不均一が重要    と考えられている。

図2:細胞膜類似の構造をもつベシクル(閉じた小胞)上の脂質二重膜内で起きた相分離(蛍光色素でオレンジとグリーンに着色)。機能発現にはこうした膜の不均一が重要と考えられている。

 齋藤教授の研究グループはリサーチユニット発足後の2012年、液晶を対象に行った研究から、複雑な構造における分子の凝集構造を明らかにしました。この構造(図1)は高分子でも広く見出されることから、「科学新聞(2012年9月7日付)」でも『ジャイロイド相の分子配列解明』と紹介されるなど注目を集めました。
 リサーチユニットメンバーの現在の研究対象は、ガラスを含む複雑液体、液晶、生体関連物質が主で代表的なソフトマターである高分子が手薄ですが、液晶研究のアイデアを生体物質に適用するなどして研究の展開を図っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

つくばエリアのソフトマター研究を結集

 ソフトマター研究はまだ開拓時代ですから、異分野の研究者が刺激しあいながら難解な敵に挑む体制が有効です。幸い、つくばエリアには筑波大学に加えて、産総研、NIMS、KEKといった研究機関がソフトマター研究者を有し、ごく自然に少人数での研究集会を行っていました。その活動が発展し、つくばエクスプレス沿線の東大物性研究所も加わって、「つくばソフトマター研究会」と題して研究発表会を年1回開催(2009年~)するほか、学生を介した相互協力や共同プロジェクトでの連携など活動は広がりを見せています。

 

図3:クラクフ核物理研究所(ポーランド) から2 名の研究者を招きセミナーを 開催(2014 年11 月)

図3:クラクフ核物理研究所(ポーランド) から2 名の研究者を招きセミナーを 開催(2014 年11 月)

社会への貢献・実績

● 一般向け書籍出版:瀬戸秀紀 (著) 「 ソフトマター
やわらかな物質の物理学」( 米田出版, 2012)
●「 つくばソフトマター研究会2013」開催
 ( 2013年3月11日 会場:筑波大学)
● 国内外の研究者を招き、年2 ~ 3回セミナーを開催