リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

世界遺産保全を通して持続可能な国際社会の未来を支える
世界遺産ガバナンスリサーチユニット

代表者:稲葉 信子    中核研究者:上北 恭史  吉田 正人  
他のメンバー:下田 一太  伊藤 弘  八木 春生  岡橋 純子  杉山 卓史  松井 敏也  黒田 乃生  
キーワード:世界遺産、持続可能性、多様性、国際協力

 

inaba  アフリカの貧困問題を写し出す少数民族の村の景観など、世界遺産が抱える危機は国際社会が抱える様々な問題の縮図・象徴です。本リサーチユニットでは、世界遺産の保存の哲学から生態系の保全まで、世界遺産から派生する様々な問題に関する研究を通じて持続可能な人の社会と地球の未来を考えます。必要とされる知識は多岐にわたり、都市・農村計画にも通じる建築学や景観学、観光学、自然保護に関わる生物学や森林学、そして文化遺産の保存を担う保存哲学、美術史、建築史、考古学、保存修復科学など、その専門性全てを横断する活動が展開されています。

 

地域社会の中で生きている人間の文化・自然そのものを、
現代社会の中に定着させて持続可能な保全を実現する

 私たちは、観光地で柵に囲われているような「世界遺産」の枠を越え、生活に身近な問題を含めた世界遺産のすべてを扱います。つまり、人がサステーナブルに幸せに生きるための重要な要素として文化資源、自然資源があり、その維持と保全のためになにをすべきかを考えるのです。
 例えば、インカのマチュピチュやトーゴのクータマクーの村(図1)における自然遺産の維持のためには、そこで暮らしている人の生活の維持をも考えます。カンボジアのアンコールでは、遺跡の修復と同時に観光マネジメントが非常に重要な問題です(図2)。観光や地域の経済的活動の適切な管理に取り組むことで、文化遺産、自然遺産を社会の行政・社会制度の中に定着させるのです。

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世界遺産の危機を救える、政策のトータルリーダーを世界に送り出す

 世界遺産の保全事業や危機管理は、国・地域の行政機関、企業、住民などへのコンサルテーションと交渉が大きな役割を果たします。例えば観光問題でしたら、 観光収入が大手企業に吸い上げられることなく地元の人にも届いているか、地域開発・インフラ整備などでは世界遺産としての価値の保全と生活のバランスにつ いて、関係者の間で十分な検討が行われたかどうかなどが問題になります。国際交渉力強化プログラムでは、こうした交渉や施策の提案ができ、リーダシップを発揮して地域コミュニティと連携できる実践的な能力を育てています。さらに、国連大学やユネスコ等と国際的ネットワークを形成したいと考えています。
 最近では、インドネシアのボロブドゥール遺跡、カンボジアのアンコール遺跡(図2)、フィリピンの棚田(図4)などでケーススタディ研究や学生のワークショップなどを展開しており、これらの情報の解析と蓄積を通して世界遺産ガバナンス研究基盤を整備していきます。

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社会への貢献・実績

● 世界遺産学の国際標準を構築
● 世界遺産ガバナンス改善のための政策研究を構築
● 文化と自然の多様性に配慮した持続可能な発展のための政策研究の進展
● 世界遺産をフラッグシップとする世界の文化遺産・自然遺産の保全のための活動に貢献
● 上記を通して、これらの研究を具体的な地域また国の政策に反映させていくための政策リーダーを養成
● 世界遺産条約採択40周年記念事業「世界遺産と平和、持続可能性」を、国連大学と共催(平成24年11月)