リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

社会的絆を育むホルモンのはたらき
社会性樹立のホルモン基盤についての行動神経科学リサーチユニット

代表者:小川 園子    中核研究者:Constantine PAVLIDES  宮本 信也  
他のメンバー:山本 三幸  山田 一夫  

佐野 一広 仲田 真理子 坂本 敏郎 塚原 伸治 坂本 浩隆 岩本 義輝 Zuoxin Wang

キーワード:社会行動、個体間関係、行動の性分化、行動の分子神経内分泌基盤、臨床的応用

 

ogawa人は一生の間に様々な絆を作り、 社会行動を営みます。こういった行動は男女の違い(性差)を抜きに理解する事はできません。例えば、性行動・養育行動・攻撃行動等には性差が顕著に表れま すが、これは特定のホルモンが脳内で作用することで、遺伝子の働きが変化し、それが行動としてあらわれるからです。ここでいうホルモンとは、生体の特定の 部位で働く生理活性物質のことです。このホルモンが、いったいどのように人間関係の形成に作用するのでしょうか。その秘密の解明を目指しているのが、この リサーチユニットです(図1)。

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親子・夫婦や仲間同士の愛着関係の秘密を脳に働くホルモンが解く

 脳内のホルモンは胎児期から性差の形成に関わり始め、新生児期・思春期・成熟期から老年期まで様々な段階でもホルモンの制御をうけています(図2)。ホ ルモンは社会行動の変化を促し、その影響は人と人との間に築かれる関係性にも及びます。つまり、子供の頃の親子関係、仲間との親和関係、夫婦関係や親と なってから育む親子関係などにも性差やホルモンの働きが関わっているのです。このようなホルモンの役割はマウス等の他の動物でも観察されます(図3)。例 えば母子分離を経験したマウスは、性成熟期になっても正常な社会行動がとれない、というデータがあります。マウスの実験を通して、性や脳に働くホルモンの働きを分子的にDNA、遺伝子レベルで解明し、人の社会行動の理解につなげたいと考えています。

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分子生物学の視点から社会性障害の理解を深める

社会行動は、個人の環境や経験、あるいは心理学的見地から説明される場合が多いのですが、私たちは分子生物学的な視点から社会行動を分析しています。最終 的には性差や攻撃行動、人間関係の維持に関わるホルモンの役割を解明し、現代社会が抱えている社会性障害のより深い理解につなげたいと考えています。これ は社会科学・心理学と生物学を融合させた「社会性の行動神経内分泌学」という新学術領域の確立にもつながります。この新領域で活躍できる若手の育成にも力 を注いでいきたいと考えています。

 

社会への貢献・実績

● 親子、夫婦、仲間関係などの個体間関係の形成、維持についての生物学的基盤の理解
● 個体間愛着関係の形成、維持を仲介する情動的、認知的機構の解明
● 他者との関係の形成における障害がもたらす諸問題についての臨床的取り組みへの寄与
● 日本唯一の社会性の行動神経内分泌学研究拠点の確立と、若手研究者の養成
● 研究会、シンポジウム等の開催論文や学会での研究発表活動

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