リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

「見つけた!」「これだ!」と 思った時こそチャンス!?
神経生理学リサーチユニット

代表者:松本 正幸    
他のメンバー:西丸 広史  尾崎 繁  水挽 貴至  小金澤 禎史  

設楽 宗考

キーワード: 神経活動、神経回路、脳機能、運動機能

http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/physiology/

 

51matsumoto01 頭が良くなるためにはどうすれば良いか考えたことはありませんか?脳の中で一番大切なのは、脳のどこの領域とどこの領域が情報交換しているかという神経回路です。ドーパミンという神経伝達物質は、神経回路のつながりを強めたり、弱めたりする働きがあります。そのような働きは私たちの精神機能の維持に深く関係しています。神経生理学リサーチユニットの4つのグループの1つである認知行動神経行動学グループでは、ドーパミンに注目して、研究活動を行っており、国内外からの注目を集めています。

 

ドーパミンの認知機能の可能性

 ドーパミン神経細胞から放出されるドーパミンは意欲や報酬に関わっているということはこれまでの研究からもわかっていました。パーキンソン病や鬱、ADHD、統合失調症にもドーパミン神経系の異常が関わると報告されており、患者さんは意欲障害の症状を示します。パーキンソン病の患者さんのその他の症状を見てみると、意欲障害だけではなく、認知機能障害、運動機能障害も併発しています。意欲障害はこれまでのドーパミンの研究で説明できます。しかし、なぜそれ以外の認知機能・運動機能障害がおきるのでしょうか?そこで私たちのグループではドーパミンの認知機能に関する役割に注目して研究をしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでとは違うドーパミン神経細胞の活動

図1:サルに行わせた視覚探索課題

図1:サルに行わせた視覚探索課題

 私たちのグループでは、脳構造が人間に比較的近い霊長類に様々な認知行動課題をおこなわせ、視覚探索課題を行わせた時の神経細胞の活動を調査しています。まず、モニターを使い、最初にどれくらい報酬(リンゴジュース)が与えられるかを示した後、ある線分を覚えさせます。その後一定のタイムラグ後にたくさんの線分を表示させ、その中から覚えた線分を選ばせます(図1)。するとドーパミン神経細胞は、線分を記憶する際に活動を上昇させました。また、「これだ」と正解の線分を見つけた時にも活動が上昇しました。一方、より簡単な探索条件(たとえばたくさんの○の中から△を見つけ出す条件)で正解を見つけても、ドーパミン神経細胞の活動の上昇がみられませんでした。このような結果から、ドーパミン神経細胞が記憶や視覚探索に係わる何らかのシグナル伝達に関わっていると考えられます。
 このような活動を示すドーパミン神経細胞は、黒質緻密部と呼ばれる脳領域の一部で観察されました。これは、今まで報告されてきた意欲や報酬に関わるシグナルを伝達するドーパミン神経細胞の他に、認知機能に関わるシグナルを伝達するグループが存在することを示しています(図2)。私たちのグループはこのようにドーパミン神経細胞は認知機能に関してもなんらかの信号を出していると考えており、今後例えば、認知機能が高められるときに、ドーパミン神経細胞の活動が上昇するのであれば、その時にその活動を減弱あるいは増減させて、認知機能がどうなるのかという事が調べられるような実験をしていきます。

図2:2つの異なるドーパミンシグナル

図2:2つの異なるドーパミンシグナル

社会への貢献・実績

● 2013 年 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
● 2010 年 日本神経科学学会 奨励賞
● 2008 年 日本神経回路学会 論文賞