リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

チベット仏教の源流を探って  −チベットと周辺地域における仏教の伝承と復興−
内陸アジア仏教ルネサンスリサーチユニット

代表者:吉水 千鶴子    中核研究者:佐久間 秀範  小野 基  

高橋 晃一 船山 徹 武内 紹人 久間 泰賢 加納 和雄 岡田 憲尚 根本 裕史 酒井 真道 井内 真帆 西沢 史仁 倉西 憲一 Leonard van der Kuijp Dorji Wangchuk Pascale Hugon

キーワード: チベット仏教、インド仏教、内陸アジア、仏教の復興

16yoshimizu01 仏教発祥の地インドでは13世紀以降仏教が衰退し、ヒンドゥー教が大勢を占めるに至ったため、地理的に隣接しているチベット仏教が元々のインド仏教に近いものとして興味深い研究対象となっています。チベットでは7世紀にインドから伝来した仏教が9世紀に一度途絶えましたが、その後100〜200年の間に北インド、ネパール、カシミール、中央アジアなどの影響を受けて復興しました。その仏教復興がどのようになされたのか、また周辺地域の歴史とどのように関わっているのか、仏教学、歴史学、チベット学、インド学、などを総合して多角的にとらえようとしているリサーチユニットです。

 

なぜ内陸アジア(チベット)か?

図1:内陸アジア仏教文化圏(地図は、http://shanghai-cool.jugem.jp をから転載)

図1:内陸アジア仏教文化圏(地図は、http://shanghai-cool.jugem.jp をから転載)

 仏教は、紀元前5世紀頃にインドで生まれ、ユーラシア大陸に広まり、いろいろな地域で独自の発展をしてきました。シルクロードを経由して中国、朝鮮、日本に伝わるとともに、ヒマラヤ山脈を回り込む形で内陸アジアに広がり(図1)、チベット民族の信仰の対象となりました。インドでは、13世紀のイスラム軍の侵攻にともない仏教は衰退し、その後はヒンドゥー教が主体となっています。歴史的にも地理的にもインドに近い、という点でチベット(内陸アジア)仏教は原インド仏教の色を濃く残しています。日本に少し遅れてチベット地域に仏教が伝来し、チベット古代王朝は仏教を国家宗教としました。9世紀の王朝の崩壊により一度弱まりますが、11世紀から13世紀にかけて、チベットの各地方を治める氏族の支援の下に仏教が復興し、教育機関の役割もなす寺院の建て直し、経典等の翻訳が進められました。15世紀までには、現在のチベット仏教の宗派はすべてできあがっています。チベット仏教はチベット民族を越えて内陸アジア全体に広まり、モンゴルを含む広いチベット仏教文化圏を形成し、満州人の王朝である清朝にも大きな影響を与えました。インドを中心とする南アジア、東南アジア、中国、日本を含む東アジアという仏教文化圏に匹敵する大きな仏教文化圏です。そのチベット仏教の発展の歴史は、同じ仏教を伝える日本人から見てもとても興味深いものなのです。そしてチベットが中華人民共和国の一部のチベット自治区となった現在でも、チベット仏教は中国に住むチベット民族ばかりではなく、ネパール、ブータン、モンゴルなどで信仰されています。その源となった仏教復興期に何が起こったか、を探ることは、とても面白い研究になります。しかし、それはこれまで資料不足によって、あまり解明されてきませんでした。

 

新資料発見による研究の進展への期待

 

16yoshimizu03

図2:手書きのチベット語仏教資料の一部

 ところが近年、その時代の手書き資料(一例として;図2はチベット語で書かれた12世紀の仏教資料)が、中央チベットの寺院から大量にみつかり、解読されないまま写真版で中国から出版されました。まだ未研究の資料であり、チベット仏教の源流解明の基礎になるはずです。これまでに誰も解読していない資料を世界で初めて読むことができ、仏教を復興しようとしたチベット民族の気概に触れられることにワクワクしています。現在のチベット仏教の基盤がどのように形成されたのか、明らかにできるものと期待しています。リサーチユニットは、チベット語、サンスクリット語、漢語など多言語資料を用い、海外の研究者を含む歴史、思想研究の専門家、若手研究者も取り込んで、グローバルな視点で研究を進めています。

 

 

 

社会への貢献・実績

● 2012 年10 月 筑波大学にて国際シンポジウム(周辺地域からチベットへの仏教文献と
思想の伝承)開催
● 2013 年6 月 ライプツィヒ大学(ドイツ)における国際シンポジウム(カシミールの
思想文化)参加
● 2013 年7 月 四川大学(中華人民共和国)国際学会(チベットの歴史、考古学、宗教、美術)参加
● 2013 年9 月 筑波大学にて国際ワークショップ(カシミールの学匠と仏教)開催
● 2013 年9 月 東洋文庫アカデミア講座にて講演(チベットの今を知る)
● 2014 年4 月 雲南懇話会にて講演(チベット仏教の世界)
● 2015 年3 月 筑波大学にて国際シンポジウム(文化を越境する哲学)開催