リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

経営を工学する
価値創造リサーチユニット

代表者:繁野 麻衣子    中核研究者:住田 潮  八森 正泰  
他のメンバー:山本 芳嗣  吉瀬 章子  竹原 浩太  

 

キーワード: ビッグデータ、e- コーマス、CRM、アルゴリズム

 

04sigeno01 皆さんは「工学的である」とはどういうことだと思われますか? 工学が工学たる所以は、再現性があること、つまり同じインプットをすれば同じアウトプットが得られることにあります。インプットとアウトプットの間にある関数の構造を定めることが、工学の価値だと言えるでしょう。リサーチユニット「価値創造」は、企業が抱える経営上の課題に対し工学的にアプローチする研究者の集まりです。

 

購買行動を確率論的に理解する

図1:ミーティングの様子 企業・研究者・学生が共通の課題に一丸となって取り組む

図1:ミーティングの様子
企業・研究者・学生が共通の課題に一丸となって取り組む

 経営という複雑な事象に工学的にアプローチしようという試みはアメリカで始まったもので、非常に長い歴史があります。それは基本的に、経営を財務・生産・マーケティングなどの機能別に分解したうえで分析し、それらを張り合わせて全体を理解するというやり方をとってきました。しかし、市場環境が複雑で変化の速い現代では、このような張り合わせ型のアプローチは通用しにくくなっています。そこで私たちは、企業経営において最も重要なファクターである消費者の購買行動を、確率理論や最適理論を応用して理解し、現実の経営に組み込むということに取り組んでいます。企業が現実に抱えている課題を、その企業のメンバーと私たち研究者・学生が一つのチームとなって解決しようとしているのです(図1)。

 

 

 

スマートフォンアプリの将来のダウンロード数予測

 私たちがFULLER社という企業と取り組んでいるプロジェクトをご紹介しましょう。近年、スマートフォン市場は急成長を遂げており、世界中で膨大な数のアプリケーションが開発され
ています。消費者のスマートフォン上では、日々新たなアプリがインストールされたり削除されたりしているのです。FULLER社と私たちは、ユーザーのアプリ所持状況・使用実態などのデータを最新の数理的手法を用いて分析し、新たに開発されたアプリの将来のダウンロード数を確率論的に予測することにグループごとに取り組んでいます。
 既存の将来予測の方法論であるARIMA(Auto Regressive Integrated MovingAverage)モデルには、過去の時系列データの慣性力に影響を受けすぎるという問題点がありました。そこで住田先生のグループでは、ARIMAモデルに非斉時マルコフ連鎖を組み合わせることで予測の精度を高めるとともに、予測値の確率分布を算出することができるアルゴリズムの開発に取り組んでいます(図2・3)。これが実用化できれば、世界中のアプリ開発企業に対して全く新しいサービスを提供することが可能になるでしょう。

図2:ダウンロード数予測に用いるデータの構造

図2:ダウンロード数予測に用いるデータの構造

図3:開発中のアルゴリズムによるダウンロード数予測の例 ARIMA モデルよりも精度の高い予測が可能

図3:開発中のアルゴリズムによるダウンロード数予測の例
ARIMA モデルよりも精度の高い予測が可能

 

 

 私たちは、他にもユニットを構成する各先生が中心となるグループ単位で研究を進めています。、互いに相補的もしくは相殺的なアプリの組み合わせを発見するアルゴリズムの開発や、特定のアプリに着目してスマホを複数のクラス(安定型、回復型、変動型など)に類別しその構成比の変化を予測するといった問題に取り組んでいます。

 

 

社会への貢献・実績

● 急成長するアプリケーション市場に、新たな分析手法や価値創造の方法論を提案
● 企業の実データを分析してディスカッションを繰り返すことによる実践的教育