リサーチユニット総覧(Research Unit Magazine)

修行を通して得られる「こころ」−人文科学と自然科学の学際的コラボレーションで −
こころのダイナミックス:実践修行 に基づくこころの学際的研究リサーチユニット

代表者:佐久間 秀範    中核研究者:津崎 良典  井川 義次  
他のメンバー:桑原 直巳  吉水 千鶴子  宮本 信也  

有田 秀穂 鮎澤 聡 山部 能宜 デレアヌ フロリン ミュラー アルバート 東長 靖 加藤 博己 平原 憲道 William S. Waldron Tinka Delakorda Kawashima

キーワード: 瑜伽行唯識思想、大乗仏、修行、脳科学、認識論、認知科学、東洋哲学、西洋哲学

 

03sakuma01 物理学者のアインシュタインは次のような言葉を残しています。【Body and soul are nottwo different things, but only two different ways of perceiving the same things. Similarly,physics and psychology are only different attempts to link our experiences together byway of systematic thought.( Bite-Size Einstein: Quotations on Just About Everything fromthe Greatest Mind of the Twentieth Centuryからの引用)(邦訳:体と魂は異なるものではなく、同一の事柄を二つの方法で認識しているにすぎない。同様に、物理学と心理学とは、体系的な思考によって私たちの経験を結び付ける異なる試みにすぎない。)】敬虔なクリスチャンであった彼は、本リサーチユニットで対象としている「こころ」を表現しているのかも知れません。本リサーチユニットでは、人文科学(仏教学)と自然科学(脳科学)の双方から、「あるがままの姿」をとらえる方法論を見つけようとするものです。

 

 「こころ」でとらえる「あるがままの姿」

図1:『大乗荘厳経論』の写本と校訂本(サンスクリット語)

図1:『大乗荘厳経論』の写本と校訂本(サンスクリット語)

 私たちは、目の前にある「あるがままの姿」を、五感を通して切り取り、脳が司る概念を通して抽象一般化することで「もの」として認識しています。本リサーチユニットでは、「あるがままの姿」を「もの」に変換する概念(心・理性)と「あるがままの姿」とのギャップを超越して「生命」そのものとして存在している状態をそのこころ」と呼んでいます。本リサーチユニットの研究目的は、仏教思想の側面と脳科学・認知科学の側面とから、瑜伽(ヨーガ)行の実践により「こころ」で「あるがままの姿」をとらえる(= 固定概念からの解放)認
識過程を考察し、両分野の隔たりを解消することです。

 

 

 「こころ」に対する学際的研究に期待!

 修行者の体験を言語で表現した初期の頃の唯識文献(論典)には、「あるがままの姿」をいかに悟ったかが記録されています。人文科学では、こうした過去の文献に残された記録(図1)をもとに、当時の人の思想や経験をとらえる研究を進めています。また、認知心理学などでは、脳波を計測することなどにより、「もの」の認識過程を客観的なデータでとらえる研究がされています(図2)。後者の自然科学的方法論研究者と前者の瑜伽行唯識研究者が互いの理論を各々の言葉で読み替えることができれば、「こころ」を学際的に新たに定義することができるはずです。
 そのために、人文・自然科学両分野の考え方の隔たりを埋めながら研究を行っていきます。その結果、東西哲学分野で自然科学など他分野の研究成果を活用する方法論、もしくはその逆の活用に広がりを持たせる効果が期待されます。

図2:脳波測定現場と同一環境で4名同時計測された脳波

図2:脳波測定現場と同一環境で4名同時計測された脳波

 

 

社会への貢献・実績

本ユニットはスタートしたばかりとのことで、実績はこれから生まれてくると期待しています。生命の基本である「こころ」を幅広く扱うことで、
(1)我々が生まれてからどのように世界を獲得してきたかなど乳幼児発達心理学、
(2)世界との関わりから精神疾患の大本がどこにあるかなど精神医療、
(3)健常・障害の別なく人間としてのこころのあり方を考えることでの倫理的な貢献
が期待できます。また私たち日本人の心の奥底にある(無宗教と誤ってイメージされている)「神様仏様への深い思い」の再発見をすることが出来るかもしれません。