筑波大学URA研究戦略推進室

高橋 阿貴 筑波大学 人間系 准教授 詳しくはこちら
新道 真代 筑波大学URA研究戦略推進室 詳しくはこちら
※2021年2月取材当時
SPECIAL ISSUE研究者×URA対談

研究者とURA、協働で広がる世界。

動物の攻撃行動に着目してその背景を探る研究をしている、筑波大学人間系の高橋阿貴先生。研究に夢中になると実験室に篭ってしまうそうですが、そんな時に異分野の面白い人々との出会いを繋げ、新たな世界を広げてくれるのが、筑波大学URA研究戦略推進室の新道真代の存在と語ります。

高橋先生曰く「新道さんの強みは、人と人をつなげること」。研究者にとってその強みはどう役立つのでしょうか。
公私ともに仲が良く、それぞれの立場でリスペクトし合う、同世代2人のクロストーク。
研究者がURAと協働するベネフィットと可能性を紐解いていきます。

同世代の研究者・URAとして公私ともに意気投合

お2人は同世代の研究者とURAですが、昔からの知り合いなんですか?

最初の接点は10年くらい前かな。

私が国立遺伝学研究所にいた頃ですね。自分の論文をプレスにリリースすることになって、広報の方のアイデアでネズミのイラストを添えて出すことになったんです。そのイラストがすごくかわいくて!
そのネズミを描いてくれたのが新道さんだったんです。でも、その時は間に広報の方が入って依頼していたので直接やりとりすることはなくて。

当時は私も筑波大学URA研究戦略推進室に入る前で、自分で会社を設立して研究者サポートをしていました。その後、私が筑波大学に来た頃に、共通の先輩研究者から「今度、高橋阿貴さんも筑波大学に行くよ」とお聞きして。でもすぐに阿貴さんは国際テニュアトラック制度に採用されてニューヨークに行かれてましたね。

そうそう。AAAS(米国科学振興協会)が毎年ワシントンD.C.で開催しているオープンフォーラム「AAAS Annual Meeting」に筑波大学と北海道大学のURAが共同でブースを出されていて、シンポジウムでお話しさせていただくことになって、その時に筑波大学URAの森本さんにはお会いしました。でもまだ新道さん本人まではたどり着けていない。

その後にメールで「ぜひ飲みに行きましょう!」と交わして、待望の初対面は仕事の場ではなく焼肉(笑)。

最初のイラストから3~4年経ってました。

私は阿貴さんがニューヨークで活躍されているのを見ていて、「いつか一緒に何かできたらいいな」と淡い想いを抱いていたんです。

私もネズミ以来、ずっと新道さんのファンでしたよ!

会話を楽しみながらお互いに影響を与え合う関係

ごはんを食べながら打ち合わせしたり、お喋りする中で仕事に発展したりすることもあるんですか?

ごはんの会では仕事に直接関係する話はあまりしませんね。

ただただ楽しくしゃべっている記憶しかないです。研究者とURAとして発展性のある会話はほとんどしてしていないかも。
「阿貴さん、ごはんに行こうよ!」と気軽にお誘いしちゃいます。1対1の時もあるし、同世代の人たちで集まることもあります。

新道さんは友達が多くてしかもいろんなタイプの方がいるから、お話を聞いていても実際にお会いしてもすごく面白いです。最近は「バッタを捕まえにアフリカに行っている人」の話とか、ね。自分の研究とは全然違う分野の方々の話を聞けるのが刺激になっています。

阿貴さんたちとのお喋りは楽しいし、研究の最先端にも触れることができて面白いです。それから、みんなが「あれ困るよね」「わかるー!」と言い合っているのを見て「あ、研究者はそこに困っているんだ」とこっそり思ったりしています。

軽く「こういうことで困ってるんです」と言うと、新道さんは「それならこんな人がいるので紹介しましょうか」と人脈の引き出しをどんどん開けて、一緒に考えてくれる。しかも常にニコニコと受け入れてくれるので、相談相手としての安心感がすごいです。

人と人のつながりから1つの申請書が完成し採択へ

高橋先生は、これまでにどんなサポートを受けられたのですか?

たくさんありますが、最近ではA-STEPのトライアウトの申請です。私自身はこれまでマウスの行動研究に没頭していて産学連携に取り組む機会がなかったんですが、今回、一緒に研究を進めている茨城大学の先生に「A-STEPに申請してみよう」と言われて申請することにしたんです。でも書類を見ても、一体何を求められてるのか、申請書をどう書いたらいいのかが全然わからない。そこで新道さんに「どうしよう~」と相談したら、いろいろな人を紹介してくれたんです。

相談いただいた段階で既に阿貴さんの方でチームができていて、企業の方もついていて、研究の目的もしっかりしていました。あとはそれらを申請書の体裁に落とし込むだけだったので、JSTのマッチングプランナーの方を紹介したり、茨城大学のURAも同席する打ち合わせに参加して、今後の進め方についての意見交換をさせてもらったり、A-STEP申請に詳しい方に連絡してアドバイスを貰ったりしました。

右も左もわからなかった状態から、次々と人をつなげていただいて、ひとつの申請書を完成させることができました。申請できたのも結果的に採択されたのも、新道さんの助けがあったからこそです。

URAへの気軽な相談が長期的な環境改善に結びつくことも

高橋先生は新道さんを頼りにされているんですね。

私は新道さんや筑波大学URAの方々のすごさを実感しているからすぐ相談しちゃいますけど、もし全先生が同じことをしたらURAの皆さんは困りますよね(笑)。

えっ、私自身は気軽に声を掛けていただけるのは嬉しいですよ。阿貴さんみたいにざっくりとした段階から相談してくださると、話を聞いていく中で学内の困りごとや、部署の状況について深いところまでわかってくるので、むしろありがたいです。その時の支援には直接関係しなくても、他で進めているシステム開発に繋がってきたりすることもあるし、例えば「このシステムを作る時には、部局の事務部門に意見を聞いたほうがいいな」といった学内事情を把握できるようになるので。

確かに「ここに何を書けばいいかわからない」という相談もしますけど、それより前の段階で話したことが、後になって解決できていることも多いです。研究者にとってURAは長期的な視点で一緒に考えてくれる頼もしい存在です。

そう言っていただけると嬉しいです。すぐには解決できないこともあるけど、例えば、研究者にとって「申請書作成のここがわかりにくい」ということがわかれば、私たちURAではサポートフローを見直したり、システム開発をしたりすることができます。研究者の方と話す中で課題に気づくことができて、より良い研究環境を一緒に作っていくことができるんじゃないかと思っています。

じゃあ、どんどん言った方がいいですね。

お待ちしています(笑)。

筑波大学の膨大な情報をわかりやすく整理してくれる

高橋先生は「新道さんの強みは、人と人をつなげること」と言っていましたね。

新道さんの人脈の広さと深さは本当にすごいです。
研究者には社交的なタイプと非社交的なタイプがいて、私は何時間でもマウスと一緒にいたいタイプの研究者でして。でも異分野の方ともっと交流すれば、自分の研究にも良い刺激をもらえるし、共同研究に発展したりするだろうなと思います。
自分だけでは積極的に人とつながっていくのは難しいですが、新道さんのようにURAの方が間に入ってくれると、世界を広げていけるので助かります。

私は研究者出身ですけど、「なんとしてもこれを解き明かしたい!」という強い思いを持って博士課程まで進んだわけではなくて、それよりも、人と人をつなげていくことに興味が出てきてURAに転向したタイプです。
企業の立場から研究支援をしていた中で、産業界への売り込みや広報など、自分からコンタクトを取ることが得意になりました。URAとして今も、面識があろうと無かろうと、研究者でも事務の方でも、わからないことがあるとまず聞きに行くようにしています。こういった点について、研究者の方で悩んだり時間や労力をかけたりするくらいなら、私たちURAに声を掛けていただいた方が早いかもしれません。

それで言うと、新道さんが中心となって始められた「筑波大学 100人論文」、いいですよね。筑波大学の中には様々な研究があることがわかるし、異分野の興味深い研究に出会えるし。

100人論文は京都大学で始まった企画で、「筑波大学でもやりたい!」と手を挙げて始めた企画なんです。

国立遺伝学研究所にいた頃、週1回、研究所内の先生が交代で自身の研究内容を発表する会があって、そこにいけば誰がどんな研究をしているのかを知ることができて、「この分野ならあの先生に聞けばいい」というのが見えていたんです。
筑波大学は組織として大きすぎるから、同じ形では難しいけど、100人論文のような形で交流の場を設けていただけるのは助かります。
あと、COTREはとっても便利です。

よかったです!

筑波大学は情報量も多いので、研究者が自分に必要な情報を選び取るのも難しいんです。でもCOTREで、最新の情報や、重要度を整理して、研究者に優しい形でまとめて配信してくれているのでとても助かっています。

研究者目線を大切にしながら新たな視点も投げかけたい

新道さんは、URAとして今後の展望や考えていることはありますか?

実は、A-STEP申請の時に「高橋先生の論文の中に特許申請できる要素があるのではないか」と提案したことがあるんです。私は企業の立場での研究支援の経験から、ビジネスニーズがありそうなものは事業化した方が良いという考えを持っていたんです。だけど阿貴さんは「これは私の論文ではあるけれど、他の先生に教えていただいた技術なので、その先生の存在なしにはありえない」と丁寧に説明してくださったんですね。

基礎研究だと特許という考えに至らないんです。自分ひとりで形になるものを開発するのとは違うので、私の中でうまくイメージが湧かなくて。もちろん何らかの形でビジネスにつなげることができたら、研究成果自体も発展するとは思うんですけど。

たくさんの先生方が積み重ねてきたものがある中で、筑波大学だけの成果としてしまうと、大きな研究の流れを壊してしまうことになるのだと気づきました。特許を出すことで利益は生み出せても、その後の研究がやりにくくなっちゃうこともあるんですよね。研究の実用化、民間企業からの資金調達において、その点をどう両立・分離したら最適かを考えることが自分にとっての今の課題です。

私たち研究者は、ビジネスとは遠い世界で生きているので、新道さんとお話しする中で初めて「えっ、これってお金になるかもしれないの?」と新たな気づきがありました。お互いの角度で見合って、対話することで理解が深まるんだなと思います。

あと、研究者個人のプロジェクトを大学のプロジェクトへと移行させる時も、気を配りたい思っています。ひとりの先生が育ててこられた研究を、多くの人が参加できる研究へと移行させる際には、今までの研究を壊さないよう十分な配慮が必要だと思っています。
正解はないと思いますし、研究内容や時期、研究者の方の個性などケースバイケースなので、一つひとつに合わせてカスタマイズして取り組んでいきたいです。

高橋先生から、URAへの意見やリクエストはありますか?

私はURAの方々にしっかり助けていただいている立場なので、今はこれ以上どうしてほしいというのはないですね。もし、URAに相談したことがない研究者の方がいたら、困ったことがあれば一度相談してほしいと思います。
URAの方々がたくさんの研究者とつながれば、URAの皆さんの人脈やアイデアの引き出しが一層増えて、研究者である私たちにとってさらなる恩恵となると思うんです。

研究者は研究におけるプロの生産者です。生産者が生産しやすくするように、私たちURAはどう役に立てるかを常に考えています。企業とのコラボレーションも個人の研究を大学のプロジェクトとして拡張していくことも、研究者目線を大事に、最適な方法を探っていきたいです。
また、私は大学本部に所属するURAですが、自分が馴染みのある研究分野かどうかに関わらず、等しく質の高いサポートを提供できるようにと心掛けています。

これからもいろいろと相談にのってくださいね。自分が知らない新しい人や世界へと導いてくれるのを楽しみにしています。