注目の研究

脳で記憶を支える『受容体輸送の脱線防止機構』を解明

代表者 : 武井 陽介  

2015/11/25

東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授、吉川弥生医師、筑波大学医学医療系の武井陽介教授らの研究グループは、脳で記憶を支える『受容体輸送の脱線防止機構』をはじめて明らかにしました。

NMDA型グルタミン酸受容体は、グルタミン酸に結合してはたらく受容体であり、動物の記憶や学習に深くかかわりを持つことが知られています。脳のなかで記憶がつくられるためには、このNMDA型グルタミン酸受容体があらかじめシナプスに輸送されて集められている必要があります。

本研究グループは、MAP1Aという分子が、シナプスへ輸送される途中のNMDA型グルタミン酸受容体を微小管につなぎ、安定化することでレールからの『脱線』を防ぎ、輸送の効率化と安定性の向上に役立っていることをつきとめました。MAP1Aを欠いたマウスの神経細胞では、NMDA型グルタミン酸受容体がシナプスヘうまく運ばれず、その結果としてマウスの記憶能力は著しく損なわれていました。

 

 

図 MAP1Aのない神経細胞。NMDA型グルタミン酸受容体は微小管からはずれ脱線してしまう。