注目の研究

環境リスクから身を守る生体防御系には2つの経路が存在する 〜親電子物質の毒性を抑制する鍵分子を特定〜

筑波大学 医学医療系 熊谷義人教授、秋山雅博助教らの研究グループは、健康への影響が懸念される環境中親電子物質に対する、生体防御の仕組みを新たに解明しました。

本研究では、転写因子Nrf2と活性イオウ分子産生酵素CSEが、異なる経路を介して環境中親電子物質の毒性を抑制する鍵分子である事を、遺伝子改変マウスを用いて明らかにしました。このことは、従来のグルタチオン-抱合反応を介した解毒・排出機構に加え、活性イオウ分子による、イオウ付加体形成を介した捕獲・不活性化機構が環境中親電子物質の抑制に重要であることを意味しています。さらに胎児性水俣病などに代表される、胎児期における環境中親電子物質に対する虚弱性の要因に、CSEと活性イオウ分子が関与している可能性も示唆されました。

図左: 転写因子Nrf2はGCL(GSH合成酵素), GST(GSH転移酵素), MRP(多剤排出トランスポーター)など、GSH-抱合反応を介した解毒・排出機構に関わる遺伝子群の発現を一括制御することで、環境中親電子物質に対する生体防御に寄与しています。加えて、新たな生体防御の仕組みとして、CSEによって産生された活性イオウ分子による、イオウ付加体形成を介した捕獲・不活性化機構が環境中親電子物質の抑制に重要であることがわかりました。図右: 胎児期には低く抑えられていたCSEおよび活性イオウ分子の生体内量は、出生後、成長に伴い急激に増加していくことも明らかになりました。このことは、母体により外界から隔離されている胎児期から、出生後は様々な環境リスクにさらされるため、環境応答の一環として生体防御系の強化が必要であるためと考えられます。一方で、このような胎児期でのCSEの低発現とそれに付随する活性イオウ分子の産生量の低下が、母体を介した環境中親電子曝露に対し、胎児が高感受性を示す要因となっている可能性もあります。