注目の研究

超短パルスレーザーに誘起された非対称スペクトル形状を有する格子振動の発現 ~コヒーレントフォノン生成の前駆過程の一端を解明~

2019/05/17 

筑波大学数理物質系 日野健一教授、長谷宗明教授、数理物質科学研究科大学院 渡辺陽平、計算科学研究センター 前島展也講師、米国ピッツバーグ大学 Hrvoje Petek教授は、半導体シリコンに高強度超短パルスレーザーを照射した直後に誘起されるプラズモンと縦光学フォノンの非断熱相互作用が、格子ダイナミックスを支配する要因の一つであることを、理論と実験の両面から立証しました。

本研究では、超短パルスレーザーによって励起されたキャリアと縦光学フォノンが結合して、過渡的な複合量子状態であるポーラロニック準粒子が形成されるというモデルに基づき、理論の構築を行いました。プラズモンとフォノンの両モードがローゼン‐ツェナー型非断熱相互作用を起こすことによって、コヒーレントフォノンの時間シグナルに特異な振動パターンが発現し、そのスペクトル形状に顕著な非対称性が発現する現象を見出しました。この理論計算を実験と比較し、有意な一致を得ることに成功しました。

図 当該系量子ダイナミックスにおける相互作用の模式図。フェムト秒パルスレーザーをSi結晶に照射することによって、レーザー・電子相互作用を介して、Γ―Γバンドギャップ間に瞬時に高密度なキャリアが光ドープされる。これらのキャリアには集団励起モードであるプラズモンが形成され、変形ポテンシャル相互作用によって縦光学フォノンと結合し、コヒーレントフォノン生成が引き起こされる。