筑波大学OCW

【オリンピック・パラリンピックの教育的意義 】オリンピック・パラリンピックの教育的意義

代表者 : 真田 久  

真田 久

筑波大学 体育系教授1981年筑波大学大学院体育研究科修了、1882年福岡教育大学教育学部助手、1996年筑波大学体育科学系講師、2008年体育系教授、2012年より体育専門学群長。古代から近現代のオリンピックに関する歴史研究や嘉納治五郎の思想と行動に関する研究に従事しつつ、国内外のオリンピック教育に関する実践的研究を進める。IOC公認筑波大学オリンピック教育プラットフォーム事務局長、日本オリンピックアカデミー(JOA)理事、オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議(スポーツ庁)座長、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与、同組織委員会文化・教育委員会委員。

オリンピック・パラリンピックの理念

1896年、ギリシャ・アテネで第一回が開催された近代オリンピック競技会は、その理念である「オリンピズム」の実現に向けて、一世紀以上の歴史を刻んできました。IOCのオリンピック憲章では、オリンピズムを「肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学」、また「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と定め、その目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」と示しています。
また、1948年の英国・ストークマンデビル病院で開催されたアーチェリー大会にルーツを持つパラリンピックは、1960年のローマ大会を第一回とし、現在では世界最高峰の障がい者スポーツ大会となっています。パラリンピックでは、そのゴールを「パラリンピックムーブメントの推進を通してインクルーシブな社会を創出すること」と示し、すべての人が共生する社会の構築を目指しています。
これらの実現に向けて、オリンピックとパラリンピックはそれぞれ、以下の価値を示しています。

オリンピックの価値

卓越(Excellence)
スポーツに限らず人生においてベストを尽くすこと。大切なのは勝利することではなく、目標に向かって全力で取り組むことであり、体と頭と心の健全な調和をはぐくむことである。

友情(Friendship)
スポーツでの喜びやチームスピリット、対戦相手との交流は人と人とを結び付け、互いの理解を深める。そのことは平和でよりよい世界の構築に寄与する。

敬意/尊重(Respect)
互いに敬意を払い、ルールを尊重することはフェアプレー精神をはぐくむ。これはオリンピック・ムーブメントに参加するすべての人にとっての原則である。

パラリンピックの価値

勇気(Courage)
マイナスな感情に向き合い、乗り越えようと思う精神力

強い意志(Determination)
困難があっても、諦めず限界を突破しようとする力

インスピレーション(Inspiration)
人の心を揺さぶり、駆り立てる力

公平(Equality)
多様性を認め、創意工夫をすれば、誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力

オリンピック・パラリンピック教育

そして、これらの価値をとくに若い世代に広めていく教育活動のことを、オリンピック教育、パラリンピック教育と呼びます。2020年の東京大会では、オリンピックとパラリンピックが同じ組織委員会の下で運営されることから、それらをあわせて「オリンピック・パラリンピック教育」という名称で、全国で様々な教育活動が展開されています。筑波大学オリンピック教育プラットフォームでは、国内外の関連研究・情報を集約し、「研究」と「実践」の両輪でその推進を行っています。