注目の研究

睡眠・覚醒制御の分子ネットワーク解明への道を拓く新規遺伝子の発見(2016.11.)

代表者 : 柳沢 正史  

2016/11/03

睡眠覚醒制御の根本原理は、未だ謎に包まれています。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の船戸弘正教授と柳沢正史機構長/教授らの研究グループは、この謎に真正面から挑み、睡眠覚醒制御において重要な役割を果たす2つの遺伝子を見出しました。

研究手法としては、具体的な作業仮説を置かず、ランダムな突然変異を入れた多数のマウスをスクリーニングする方法(フォワード・ジェネティクス)を採用し、覚醒時間が大幅に減少する Sleepy 変異家系と、レム睡眠が著しく減少する Dreamless 変異家系を樹立することに成功しました。そしてそれぞれの責任遺伝子(Sik3 および Nalcn)を同定し、その機能を詳細に明らかにしました。

Sik3 は、他の分類群の生物(ショウジョウバエ、線虫)でも睡眠様行動を制御していることを確認しました。また、Dreamless 変異マウスでは、レム睡眠の終止に関わるニューロンを含む領域の活動パターンが変化していることを発見しました。これらは、睡眠覚醒制御において中心的な役割を果たす遺伝子を世界で初めて見出した成果です。

今後、この結果を足がかりとして、睡眠・覚醒ネットワークの全容解明が進むとともに、将来的には睡眠障害の解決にもつながることが期待されます。

掲載論文

題名

Forward genetic analysis of sleep in randomly mutagenized mice.
「ランダム変異マウスにおける睡眠のフォワード・ジェネティクス解析」

著者名

Funato H, Miyoshi C, Fujiyama T, Kanda T, Sato M, Wang Z, Ma J, Nakane S, Tomita J, Ikkyu A, Kakizaki M, Hotta N, Kanno S, Komiya H, Asano F, Honda T, Kim SJ, Harano K, Muramoto H, Yonezawa T, Mizuno S, Miyazaki S, Connor L, Kumar V, Miura I, Suzuki T, Watanabe A, Abe M, Sugiyama F, Takahashi S, Sakimura K, Hayashi Y, Liu Q, Kume K, Wakana S, Takahashi JS, Yanagisawa M.

掲載誌

Nature
DOI: 10.1038/nature20142

関連リンク

  • Forward-genetics analysis of sleep in randomly mutagenized mice (Nature DOI: 10.1038/nature20142)

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