ハロー先端科学(大学新聞)

人骨から食生活を明らかに 人間社会のルーツを探る

人の骨には膨大な情報が刻まれている。そして、古代の共同墓地に眠る人骨を調べれば、家族構成から食生活まで、多くのことを読み解くことができる。常木晃あきら教授(人社系)も西アジアを中心に、人骨に眠る謎を追い続ける研究者の一人だ。
 同教授の専門は、西アジア考古学、民族考古学、葬送に関する考古学だ。2007年から10年まで、シリア北西部のテル・エル・ケルク遺跡にある、紀元前6300年ごろの世界最古級の共同墓地で、人骨や埋葬品の発掘調査を実施。人骨の分析の結果、同じ地域に住んでいても、家族ごとで食生活が異なっていたことなどを明らかにした。
 発見の決め手になったのは、人骨に含まれるコラーゲンだ。人骨のコラーゲンの元素配分には、個人の食生活が色濃く反映される。例えば▽窒素元素の割合が高いと植物中心の食生活▽炭素元素の割合が高いと肉中心の食生活……という具合だ。常木教授はアイソトープ分析を専門とする東京大学の米田穣教授、同大学院生の板橋悠さんらに依頼し、発掘した人骨のコラーゲンを多数分析。同じ場所に固まって埋葬された人骨中に含まれる、窒素元素と炭素元素の割合を比較した結果、これらの人骨に含まれる元素の割合がほぼ同じだと分かった。これは生前、同じ食生活をしていた証拠といえる。
 通常、同じ場所に埋葬された人骨は家族関係にあったと推測できる。シリアの場合、同じ場所に埋葬されていたことに加え、同じ食生活をしていたことから、これらの人骨は家族関係にあった可
能性が非常に高いことが推測できた。
 食生活の違いが分かれば、当時の集落の文化や慣習などを検討するための大きな手がかりとなる。家族と推定された人骨群ごとに元素配分が異なっていたことから「(同じ集落に)肉好きの家族
も、魚好きの家族もいた」ということが分かった。「食生活の違いから、同じ集落の中に貧富の差があった可能性がある」とも常木教授は推測する。

 古代の謎である当時の西アジアの食生活を紐解く支えは、コラーゲン分析などの、先端科学の力だ。「西アジアの古代文明を明らかにすることは、現代の人間社会のルーツを解明することにつながる」とも常木教授は話している。(佐々木優=知識情報・図書館学類3年)