ハロー先端科学(大学新聞)

最適な組み合わせを算出 体育の種目選択で実用化

 

 筑波大学の全学生は体育の授業が必修だ。サッカーにダンス、柔道。さまざまな種目があるが、自分はどの種目にしようか。第一希望のダンスは人気だから、定員を超えるだろう。抽選に落ちた
ら不人気な種目に回されてしまう――。こんなふうに迷い、望まない種目を受ける学生は昨年まで大勢いた。この問題を解決したのが、吉瀬章子教授(シス情系)の研究室の協力で開発されている
「体育種目選択最適化システム」だ。
 吉瀬教授の専門は「最適化モデリング」。物事の最適な組み合わせや順序をコンピューターで効率良く計算し、利益を最大にしたり逆に不利益を最小にする学問だ。工場の生産計画や道路保全計
画の効率化などに使われる。
 この研究が、今秋から筑波大学の「体育」の種目選択で実用化された。体育では希望種目を選ぶが、種目ごとに定員がある。これまでは第一週の授業で学生全員が体育館などに集合し、第一希望
の種目のコーナーに集まるという方式を取っていた。定員を超えた種目は抽選が行われるが、漏れた場合は第二希望の種目の元へ。だが多くの種目で希望者が既に定員に達するなどしてやりたくな
い競技に回される場合もあった。
 吉瀬教授らが開発したシステムは、ウェブサイトで学生に種目ごとに履修したい度合いを1〜5点の点数でつけてもらい、コンピューターで全員分のデータを分析するもの。各種目の定員を考
慮しながら、なるべく全員が5点、悪くとも4点以上の種目に割り振り、履修したくない種目にならないようにする。全員の満足度の総和を最大化しつつ、全く希望に合わない人が出ないよう「満
足度の底上げ」を図るために最適化モデリングの理論を取り入れた。学生数が多いため、コンピューターが不可欠だ。

 この仕組みの導入で、第一週から授業を行えるようになったほか、教職員の手間も大幅に削減された。現在は、各種目の男女比やその種目の経験者かどうかなど、より複雑な条件を考慮した問題
に取り組む。

 吉瀬教授は「コンピューターだけでは不可能な微調整もあり、最後は人の手を借りている。それでも、担当の教職員からは『作業が楽になった』とおおむね好評だ」と手ごたえを感じている。
 「最適化モデリング」を用いれば、例えば飲食店の従業員の最適なシフトを組むこともできる。「ベテランと新人を同じシフトに入れたい」「ある人とある人は仲が悪いので別の日に働いてもら
いたい」などさまざまな要望に対応。皆が働きやすいシフトを組める。
 「最適化」のプロジェクトを進める上で苦労するのは「数式を使って人や物を動かすことに抵抗を覚える人が多い」(吉瀬教授)ことだという。「『ずっと手作業でやってきたのだからコンピューターでできるはずがない』とよく言われる。だが、一度プログラムの結果を見せると効率の良さに魅力を感じ、『最適化モデル』を取り入れようと検討してくれる」と吉瀬教授は話す。
 「最適化モデリングの便利さを多くの人に知ってほしい」と語る吉瀬教授。さまざまなものを「最適化」すれば、私たちの生活はもっと豊かになるはずだ。(井口彩=社会学類3年)