ハロー先端科学(大学新聞)

海底から噴き出すCO2 伊豆諸島の式根島で発見

地球上では現在、自動車の排気ガスなどが原因で、大気中の二酸化炭素(CO2)が増え続けている。CO2が水に溶けると水中の水素イオン濃度が低下し、水は酸性化する。酸性雨を生む一因だが、影響は海にも及んでいる。海面から溶け込むCO2の増加で、かつてない速さで海の酸性化が進み、生態系への影響が懸念されている。筑波大学下田臨海実験センター(静岡県下田市)のアゴスティーニ・シルバン助教(生環系)らは、海底からCO2が吹き出す一帯「CO2シープ」を伊豆諸島の式根島で発見したと今年7月に発表。海の未来像を解明すると注目されている。
 シープ(seep)とは、何かが染み出る場所という意味。CO2シープでは、海底火山のマグマが周辺の石や土を燃やし生じたCO2が、気泡となって海底から噴き出し、海水に溶け込む。こ
の一帯の海水はCO2を多く含み、通常の海域より酸性化が進んだ状態になるため、酸性化の進行が海の生態系に与える影響を調べられる。
 式根島は海底火山の噴火で生まれた島で、今回発見されたCO2シープは島南部の御み か ま釜湾と足あしつけ付海岸の2カ所。13年9月にシルバン助教らが式根島に隣接する新島に観光で出向いた時、「この辺りの海底に何かが噴き出している場所がある」という話を島民から聞いたことが発見につながった。2008年に地中海のシチリア島で初めて発見されて以来4つ目で、太平洋の温帯地域では初の発見。シルバン助教は「式根島のCO2シープと2100年ごろの太平洋は、酸性化の度合いが一致すると予測するデータがある」と語る。
 本格的な調査は昨年6月に開始。同月に下田臨海実験センターに就航した最先鋭の調査船「つくばⅡ」を使用し、噴出する気泡に火山性の有毒ガスが含まれるか調べた。多量の有毒ガスが含まれ
る場合、酸性化の影響を正確に測定できないからだ。調査の結果、式根島のCO2シープには有毒ガスがほとんど含まれず、研究対象になると判明。今年7月にはCO2シープの発見と調査結果
を発表し、注目を集めた。

 現在は同センターの技術職員や学生と共に「つくばⅡ」の潮流計などを使い、島周辺の海流や海水温を調べたり、潜水調査で生息生物などのデータを採取したりしている。通常の海域と比較し、
CO2シープと式根島の生態系との関係を探る。
 これまでシチリア島など他のCO2シープの研究で、酸性化した海ではサンゴや海藻が生息しにくいことが分かっているが、魚類などの海洋生物に与える影響はまだ不明だ。同助教は「生態系全
体を対象に、太平洋温帯域での酸性化の影響を研究したい」と話している。(田中開=教育学類2年)