ハロー先端科学(大学新聞)

英語長文の読み間違い 目の動きから原因探る

代表者 : 卯城 祐司  

出てくる単語や文法は知っているものばかりなのに、英語の長文を読むと内容を誤読してしまうことを、誰もが一度は経験しただろう。読み間違いを防ぐために生徒にどう指導すればいいのか研
究を行っているのが卯城祐司教授(人社系)だ。
 卯城教授は、心理学などで使われている「眼球運動測定装置」を使い、英文を読んでいる時どのように視線が動き、どの部分をどれくらい見つめているか測定することで、文章全体を正しく読
解できる読み方がどのようなものか探っている。
 実験では装置で頭部を固定した状態で、モニターに映る矛盾を含んだ英語の長文を読んでもらい、視線の動きや文中のある部分を見つめる時間を測定。前の文脈と矛盾する内容が出てきた際に、どのように読み戻るかを調べた。
 その結果、長文の中で矛盾する内容が離れて書かれていた場合、多くの人が矛盾に気づきにくくなると分かった。例えば、「メアリーはベジタリアンだ」という文の近くに「メアリーはチーズバーガーを注文した」という矛盾する内容が書かれていると、多くの人が「ベジタリアンだ」と書かれていた部分に視線を戻し長く見つめていたが、離れているとそのまま読み流す傾向にあった。
 そこで現在は、「テキストの内容を想像しながら読むように」という指示を出すことで、矛盾する内容の文が離れていても矛盾に気付けるのではないかという仮説を立て、検証を行っている。
「読み間違いは、英文を訳すことにしか意識が向かず、文と文のつながりを気にせずに読み進むから起こる。ストーリーを頭の中で組み立てながら読めば文章全体に目を向けられるため、自分の理
解が間違っていると思い、立ち戻って確認するようになるのではないか」と卯城教授は予測する。
 卯城教授は大学教員になる前、高校の英語教員として12年間働いたが、科学的根拠に基づいた長文読解の指導方法がなかった。「どうやって読み間違えてしまうのか、その過程を知りたい」。
そう思い、卯城教授は大学教員として研究の道に進んだ。
 現在、研究の対象は登場人物の特徴や行動が変化している場合の読み間違いだけだが、今後は場面の転換がある場合なども含め、研究対象を広げていく。「英文読解に大切なのは、文法を一つ一
つ理解することでなく、話の内容全体を通して理解できること。研究を重ね、英文読解が分からない中高生を支援していきたい」と卯城教授は語る。(油布知夏=人文学類3年、写真も)