ハロー先端科学(大学新聞)

異常気象の実態探る 10年先を見据えた研究

 
近年、ヒートアイランド現象やゲリラ豪雨などの異常気象が問題となっている。日く さ か下博幸准教授(生環系)は、これらの実態を把握し、対策のための研究を進めている。
 日下准教授は1999年に「都市キャノピーモデル」を開発。これは、地球の大気をルービックキューブのようにブロックごとにわけて気象を予測する際、各ブロックで自動車やエアコンの使用
などで生じる熱や建物が気象に与える影響を計算するプログラムだ。同モデルが開発されたことで、都市の気象予測の精度が大きく高まった。
 
14年前に都市キャノピーモデルの論文を、大気境界層気象学の分野で最も権威ある学術雑誌『Boundary-Layer Meteorology』に発表した当時、都市が気候に及ぼす影響は小さいと考えられており、「『こんなものを作っても仕方がない』と言われた」(日下准教授)。だがヒートアイランド現象など、都市で発生する異常気象が社会問題になると、多くの研究者が同准教授の研究に注目し始めた。10年ほど前から論文が引用されることが増え、2013年、14年には、『Boundary-Layer Meteorology』で過去に発表されたすべての論文の中で最も多く引用された。同准教授は「都市に特有の気象は考えなくてはならない問題になると思っていた」と語る。 最近は新モデルを開発し、どこに街路樹を植えればヒートアイランド現象を抑えられるかを計算している。
14年前のモデルでは1〜5㌔㍍四方の気象しか計算できなかったが、1~2㍍四方ごとにできるようになり実現した。道路一本や建物の日陰にも着目し、限られたスペースと予算で街を効果的に涼しくするための研究を進めている。
 また、都市と雨の関係についての研究も行う。「都市の発達が集中豪雨を増やしている」というのが通説だったが、定かではなかった。そこで日下准教授は、東京に都市がある場合とない場合で
どのように気象が変わるのか、8月の天気を32年分にわたりシミュレーションし、分析した。
 その結果、都市がある場合の方が雨は降りやすいとわかった。首都圏で雨が降りやすいのは、海風が内陸に進み、山からの風とぶつかる地点。東京では夏に東京湾から海風が吹くが、都市の存在
が海風の侵入速度を遅らせ、ビル群の上空で山からの風とぶつかることが多くなる。そのため雨雲が発生しやすくなり、ゲリラ豪雨などが増える。
 日下准教授は今後、「途上国の都市開発による環境への影響を探りたい」と意欲を見せる。これからも、10年先を見据えた一歩先を行く同教授の研究に期待したい。(大西美雨=社会学類2年)