注目の研究

夜も眠れないほど辛い痒みが起きるしくみを解明

2014/05/13

研究成果のポイント

1. 痒みの緩和に機能する神経(B5-Iニューロン)を発見しました。
2. B5-Iニューロンは、内因性オピオイドのダイノルフィンを分泌します。
3. メントールや痛みなどの刺激が加わると脊髄からダイノルフィンが再分泌されて痒みを抑えます。
4. 痒いときに引っ掻いたり患部を冷やしたりメントールを塗布することで痒みが緩和する理由がこれで説明できるようになりました。

研究の概要

筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の長瀬博教授は、米国ピッツバーグ大学のSarah E. Ross教授らとの共同研究により、“痒み”のメカニズムを解明することに成功しました。今まで知られていなかった痒みの伝達に関与する神経(B5-Iニューロン)を発見すると同時に、内因性オピオイド(注1)のダイノルフィンが痒みを阻害する神経伝達物質であることを突き止めたものです。

通常は、ダイノルフィンという痒み抑制物質が分泌されることで抑えられていますが、体に異常があるとダイノルフィンの分泌が抑制され、激しい痒みが発現します。またこの時、痛み(激しい掻きむしり)や冷却(低温やメントール)による刺激を与えると、脊髄からダイノルフィンが再分泌されて痒みを抑えるようになります。ダイノルフィンはナルフラフィン(注2)と同じオピオイド受容体に作用することが知られていましたが、ナルフラフィンを脊髄に投与すると劇的に痒みを抑えられることが今回の研究で明らかとなりました。この新たな知見は、痒みの機序の解明において重要な一端を担うこととなりました。

 

 

 

(注1)オピオイド:アヘンから抽出される鎮痛作用のある薬物。モルヒネなどを含みます。
(注2)ナルフラフィン塩酸塩:長瀬教授が開発し、2009年に商品名「レミッチカプセル」として発売。腎透析患者の抗ヒスタミン薬などの既存薬が無効なかゆみに対する有効性が確認されています。

掲載論文

【題 名】 Dynorphin Acts as a Neuromodulator to Inhibit Itch in the Dorsal Horn of the Spinal Cord

(ダイノルフィンは脊髄後角において抗掻痒のための神経修飾物質として機能する)

【著者名】 A. P. Kardon, E. Polgάr, J. Hachisuka, L. M. Snyder, D. Cameron, S. Savage, X. Cai, S. Karnup, C. R. Fan, G. M. Hemenway, C. S. Bernard, E. S. Schwartz, H. Nagase, C. Schwarzer, M. Watanabe, T. Furuta, T. Kaneko, H. R. Koerber, A. J. Todd, S. E. Ross

【掲載誌】 Neuron 82(3):573–586, 2014.

【掲載日】 2014年5月7日

 

長瀬博教授