注目の研究

関節リウマチの診断と治療経過の把握を可能にし得るバイオマーカーを発見

代表者 : 松本 功  

筑波大学 医学医療系 松本功准教授、住田孝之教授らの研究グループは関節リウマチ(RA)患者における特異的な新規バイオマーカ-、シトルリン化 inter-α-trypsin inhibitor heavy chain 4(cit-ITIH4)蛋白を発見しました。

RAは免疫の異常によって起こる疾患です。RA患者では、シトルリン化蛋白に対する免疫応答が存在するといわれ、血清中の抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)の有無を検査することはRA診断の大きな一助となります。しかしながら、ACPAはRAの活動性(病状の程度)の指標とはならず、陰性であっても罹患している場合もあります。また、活動性指標となる炎症マーカーのCRP(C反応性蛋白)は、RA以外の感染症などにも反応するため、RAの診断と活動性両者の判定に有効な特異的バイオマーカーの探索が重要となっています。

本研究グループは、シトルリン化蛋白がRAの病状にどのように関与しているかを調べました。その結果、このシトルリン化蛋白が蛋白がITIH4(cit-ITIH4)であること見出しました。さらに、cit-ITIH4蛋白がRA診断、及び疾患活動性の経過を追う上でも重要なバイオマーカ―であり、有効な生物学的製剤などでの治療後の変動や、その治療薬を中止するためのバイオマーカ―になりうることが明らかとなりました。

 

図 関節リウマチ(RA)が起こるしくみ
喫煙や歯周病などの環境因子は、PAD酵素を介して体内でのシトルリン化蛋白の産生を促進する。RAの病因においては、特有のヒト白血球型抗原を持つ患者群で、このシトルリン化蛋白を樹状細胞などが取りこみ、特異的にT細胞に抗原提示し、それに基づいてB細胞がACPAを産生すると考えられている。ACPAやリウマトイド因子はシトルリン化蛋白と免疫複合体を作り、マクロファージを活性化し、炎症性サイトカイン(TNFαやIL-6)が放出される。これらが滑膜細胞の増殖を促し、また、局所でもACPA免疫複合体が関節炎症を起こすため、慢性の滑膜炎、しいては骨破壊を起こす。