ハロー先端科学(大学新聞)

「光るビブス」交流のきっかけに自閉症児に効果的な支援を

代表者 : 鈴木 健嗣  

文部科学省によると自閉症スペクトラム=※1=の子どもなど発達障がい児が通う特別支援学級の在籍者数は、この10年間で約2倍の17万5千人に増加しており、発達障がい児への支援が急務となっている。鈴木健嗣教授(シス情系)の研究チームでは、自閉症児の手首や額に小型の機器を取り付け、相手との距離や顔の向きなどを測定。他者とのコミュニケーションの取り方を数値化し、自閉症児への効果的な支援
法を確立する研究を行っている。
 自閉症児は幼児期から、コミュニケーションを苦手とする傾向や、言葉の発達の遅れなどの障がいを持つ。だがこれらの障がいは数値化して分析することが困難で、具体的な根拠をもった効果的な支援は難しい。
 そこで鈴木教授らは、小型の機器を装着して相手との距離や顔の向きなどを数値化する「ソーシャル・イメージング」と呼ばれる技術の利用を考えた。一例としては自閉症児に相手との距離や相手に接近した時間を測る「ビブス」と呼ばれる薄いベストのような機器を着用してもらい、相手と近づいた際にそれが光る仕組みの「光るビブス」
を開発した。
 この上で、数人の自閉症児を対象に、子ども同士が自由に遊ぶ時間を計測。すると、互いのビブスが発光することに興味を示したため、子ども同士が近づいて遊ぶ時間がビブスを身に付けていない状態と比べて増加することが分かった。
 更にその後、ビブスを外して遊んだ場合にも、子ども同士が近づいて遊ぶ時間が増えることも判明。「光るビブス」のように他者と交流するきっかけを与えることで、自閉症児の行動に変化を与えることが可能だと分かった。
 これらの技術を用いれば、客観的なデータを用い、自閉症児への効果的な支援策の考案が期待できる、というのが鈴木教授らの考えだ。
 鈴木教授らは今後、筑波大学附属大塚特別支援学校でビブスをはじめとする装着型機器を使い、自閉症児への効果的な支援法確立に向けた研究を進める。同支援学校では、自閉症児のコミュニケーション能力向上を目指す施設「ミライの体育館TM」をつくり、同施設で研究を行うという。
 「光るビブス」が、自閉症と向き合う子ども達の未来を明るく照らし続ける。(吉永真理=生物学類2年)

※1.自閉症スペクトラム=幼少期に発症し、主に言語能力や対人関係の構築に困難をきたす発達障がいの一種。