ハロー先端科学(大学新聞)

受粉不要なトマトを開発技術の実用化で生産安定へ

さまざまな農作物を生産する上では、昆虫や人の手による受粉の作業が
欠かせない。だがこれらを必要としないトマトの研究が江面浩教授(生環
系)や徳島大学の刑部敬史教授らの研究チームで行われている。   
 トマトをはじめ、多くの農作物の生産ではミツバチなど、昆虫の力を借
りて受粉することが必要不可欠だ。しかし、昆虫の活動が鈍る夏場や冬場
はその受粉が難しく、人工受粉を行う。この際、人の手で多くの花に花粉
や成長を促進するホルモンを吹きかければならないが、これは暑いビニー
ルハウス内での作業を強いられるなど農家にとって大きな負担だった。
 そこで江面教授らは、果実の大きさや、病気への強さなどに関する遺伝
子を構成する塩基の変化に着目。薬品や放射線を用いて塩基の種類を変化
させたトマトを数多く作成し、どの遺伝子が果実の大きさなどに影響を与
えるかを調べた。
 その結果、受粉することで果実を作る働きを持つ「SlIAA9」と呼
ばれる遺伝子を構成する塩基が変化すれば、受粉が必要なくなることを発
見。これまで同様の品種改良を行おうとした場合、人工受粉などを行っ
て異なる種類のトマトを交配させる必要があり、4〜5年ほどを要してい
た。だが、今回のゲノム編集による方法では交配の必要が無いため、改良
に必要な期間が約1年と大幅に短くなった。
 この技術が広まると虫や人の手による受粉を行わず、果実を作る農作物
を育てることが可能となり、農家の負担の大幅な軽減や、安定した農作物
の供給が期待できる。これは生産に必要な人手を減らすことにもつなが
り、高齢化で農業人口の減少が深刻化している日本の農業にも寄与する。
また、今回の技術の応用で、日持ちの良い果実の開発も可能になるとい
う。
 研究チームは今後、実用化に向けてこの技術を用いたトマトの本格的な
改良を目指すほか、トマト以外でも同様の品種改良を目指した研究を行う
予定だ。
 江面教授は「受粉を必要としない作物が増えると農家の負担の軽減だけ
でなく、作物の生産も簡単になり生産量も増える。このため食料問題の
解決につながる」と話し