ハロー先端科学(大学新聞)

奇形精子の原因を解明 不妊治療に大きく貢献(2016.10)

兼森芳紀助教(生環系)の研究チームは、男性の「奇形精子症」に関わるタンパク質の機能と不妊との関係を明らかにした。過去、不妊は女性
に原因があるとされ、女性が治療を受けることが多かったが、近年、原因の半数近くが男性側にあることが判明。

今回の成果は日本の夫婦の6組に1組が経験するという不妊治療への大きなステップになりそうだ。 精子は大きく「頭部」と「尾部」に分かれるが、奇形精子症はこのうちどちらか一方、もしくは両方が正常に形成されない。この症状の精子は運動機能が低いため卵子に到達しにくく、不妊の原因になる。
 兼森助教は、精子頭部の一部に含まれるタンパク質「ACRBP」に着目。ACRBPを生成できないマウスを作成し、通常のマウスと比較実験
を行った。 その結果、ACRBPを正常に生成できないマウスは、正常な頭部を持つ精子を作れず、精子の運動能力が低下することが分かった。この精子は人間の奇形精子症の精子に酷似しており、ACRBPの欠如が人間の奇形視点精子症の原因である可能性がある。
 現在、奇形精子症患者の遺伝子を研究。ACRBPと不妊との関係を調べている。不妊の新しい診断法や治療法発見につながることが期待されて
おり、今後、筑波大学附属病院となどとも連携して研究を進める方針。
 今回の研究成果について、兼森助教は「最初から不妊に関わるタンパク質を探していた訳ではない」という。
 兼森助教は九州大を2003年に卒業後、同大大学院に進学。6年間両生類の受精の仕組みを研究したが、「(両生類より)ヒトに近い哺乳
類の研究をしたい」と、2009年に筑波大へ移った。
 筑波大では、マウスの受精の仕組みと卵子の成熟過程の研究を進める一方、精子頭部の一部に含まれるタンパク質の機能の研究を進めていた。そ
の中で30年前に発見されたACRBPの機能が未解明であると気付いた。
 当初はそれほど重要だと思っていなかったが、解析を続けるうちに、精子の形成に重要な役割を持つタンパク質だと分かった、という。
 同助教は「最初から不妊治療に応用できるタンパク質を探していたわけではなかったが、結果的に不妊の研究に大きく貢献できた」と話した。(長手彩夏=地球学類3年)